カリマンタン/モーム流
いいトシこいて何をしてるんだといわれそう。
家にも家庭にも縁がないまま、わたしはまた風来坊を決めこもうというのだ。
カリマンタンに出発するのはいよいよ明日(30日)になったけど、鬼が出るかニシキヘビが出るか、行き当たりばったりのひとり旅。
エライと思われちゃ迷惑だ。
たいしたもんだと思われても困るのだ。
わたしは終活の一環として旅をするのである。
こういう男の末路が惨憺たるものであることは覚悟のうえで、貯金をはたいて出かけるのである。
英国の作家サムセット・モームは、日本を含めた世界各地を旅して、旅から拾い上げたような一連の作品を書いている。
うらやましいことである。
彼は作家としてあるていど名声を確立してから旅行をしたので、経済的にも恵まれていたし、まだ大英帝国が世界中に植民地を持っていた時代に、英語圏の国民として旅をしたのだから、会話もそれほど不自由しなかっただろう。
英語のできないわたしはと、またなげき節が入ってしまう。
もっとも、最近では言語だけが必須じゃないこともわかってきたけどネ。
モームの旅はどんなものだったろう。
彼は好奇心のおもむくままに、南海の小島や、アジアの僻地のようなところへも足を運んでいるけど、ほとんどの場合、一種の特権階級の旅だったのではないか。
そのあたりではまずまず一流とされるホテルに泊まり、ホテルでは給仕や小間使いにかしづかれ、酒と料理を楽しみ、宿で知り合いができれば世間話やトランプをし、ひとりになったら思索にふける。
そんな調子で、著名人としてかなりめぐまれた旅をしていたのだろう。
これはキューバにいすわったヘミングウェイにもいえる。
もちろん特権階級の旅といっても、自分の時間がぜんぜんないパック旅行や、いまどきのブランド商品買い出し、食べ歩き旅行といっしょにされちゃあ困る。
モームは名所旧跡にそれほど興味がないことを公言していたし、それよりも旅先で見かける人間の多様な生き方のほうに興味があった。
こういう旅を、かりに 「モーム流」 と名付けよう。
考えてみると、貧乏学生や勤労青年ならいざ知らず、世界を見てまわろうと考えるほどの、あるていどトシをくった男性ならば、こういうスタイルの旅がいちばん理想ではないだろうか。
わたしは有名でも金持ちでもないけど、幸運にも日本という国に生まれたおかげで (そしてひねくれた人生を選択したおかげで)、モーム流の旅をすることができる。
これからわたしはインドネシアのカリマンタン島というところへ行くのだけど、金満国の日本人であるわたしは、そこで特権階級みたいな旅ができるはずだ。
でもいたずらにそれに耽溺することなく、モームのようにいろいろ考えてこよう。
そう、ホテルのベランダで風に吹かれながら。
テーブルにワインでも置いて。
というわけで、明日からしばらくブログの行方がわかりません。
いちおうWi-Fiの使えるホテルを予約したので、あちらで更新できるならするつもりなんだけど。
添付画像は、上が今回の旅で予約したホテルで、下はモームにちなむ文様。
宿はなかなかすてきに見えますが、ネット上の写真は、じっさいに見るまで信用できないことをロシアの旅で実証ずみ。
だから予約したのは最初の3日間だけで、その後はやっぱり行き当たりばったり。
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