カリマンタン/おやじガイド
バンジャルマシンで出会ったガイドはもうひとりいる。
こちらも街をぶらぶらしているとき話しかけてきた男性で、長髪クンのとき以上にたまげた相手である。
どうもバンジャルマシンには、注文を待つのではなく、みずから観光客を探しまわる、街の遊撃手みたいな個人ガイドが何人もいるらしい。
彼のスタイルを紹介するのになんといったらいいだろう。
ちょうど土木作業員が1日の仕事を終えて帰宅するところとでもいうか。
説明するより写真で見せるほうが早いから、写真を見せる。
どれがそうだって?
ほれ、自転車をこわきにかかえて、ゴム長をはいたおっさんがいるでしょ、画面のまん中に。
こういう汚いガイドもめずらしい。
前歯が1本欠けていて、坊主頭で、まっ黒になったトレーナーで、こんなのが寄ってきたら観光客はみんな逃げてしまいそう。
でも悪人には見えなかったから、てきとうに相槌をうって、しばらくお付き合いをしてみた。
まだ旅行バッグが届かずに困惑していたときだから、そういうわけなんだ、金を貸してくれないかと冗談をいいながら。
だんだんわかってくるけど、彼はなかなかの勉強家で、よれよれになったぶ厚い日本語辞書、その他の辞書を持っており、しかもページのいたるところに書き込みがあるところをみると、猛烈な勉強家であるらしい。
怠惰で勉強ギライのわたしのほうが赤面してしまうくらい。
もっとも勉強しているわりには、日本語は話せないようだった。
そんな彼のことを、ここではかりに “おやじガイド” と呼んでおこう。
おやじガイドの案内でぶらぶらするうち、とくに変哲のない1軒の民家のまえにさしかかった。
この家の主人は日本語を話しますよという。
残留日本兵でも住んでいるのかと思ってのぞいてみたら、玄関のところに認知症みたいな、色白でふっくらしたじいさんがぼんやりと座っていた。
日本語わかりますかと声をかけてみても、中空を見つめたまま返事もしない。
ほんとに認知症のようである。
そのうち奥から丸いメガネの息子らしい男性が出てきた。
彼も日本語はわからないようだった。
どうもわたしの見立てでは中国人らしい。
おやじガイドには中国人も日本人も同じように見えるのだろう。
長髪クンもそうだったけど、ガイドというのは顔が広いのか、いたるところでそのあたりの住人と挨拶を交わしていた。
こういうガイドは役に立ちそうだけど、残念ながら荷物が届くまでは、わたしは彼らを雇うわけにはいかないのである。
ふと思いついて彼に、魚市場が見たいんだけどねと言ってみた。
まかせておけというガイドに連れられて、このあと生鮮市場を見学することになるけど、それは次回に。
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