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2015年8月 3日 (月)

カリマンタン/野生について

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好奇心旺盛というのはおそろしいところがある。
わたしについていうと、水上マーケットの小舟群だけではなく、岸辺の水上集落にも注目していた。
民家のまえでは起きてきたばかりの住人が、顔を洗ったり、朝から洗濯を始めたりしている。
その足もとには、ちょうど引き潮らしく泥の地面が露出していて、いかにもシオマネキやトビハゼなんかがいそう。
しかし双眼鏡でのぞいても生きものはなにも見えなかった。

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集落の中には商店もある。
わたしが見たのは岸辺にある店だったけど、昭和半ばごろの日本の田舎の商店みたいで、雑貨が積まれ、何人かが店頭で立ち話なんぞをしている。
できればわたしも会話の仲間入りをして、どうですか、景気はなんて話をしてみたいと思ってしまった。

朝の7時ごろロクバレンタンの水上マーケットをあとにした。
ふたたびマルタプラ川を下る。
今度はもう明るくなっているから野生動物を観察するのに絶好の機会だ。
しかしどうも、そういうものがとくべつ多いとは思えなかった。
例のはきだめ運河クルーズの最後のほうでは、水田のある風景を進んでいるとき、白黒の水玉模様のナマズの死骸を見たことがあるから、川の中にはアマゾンみたいな奇怪な魚がたくさんいそうだけど、とにかく濁った川ばかりだから、水中の魚なんかまったく見えないのである。

水鳥もけっして多くない。
いちどだけ青と赤のきれいな小鳥が水面をかすめていくのを見たくらいで、野鳥といえばあとはツバメがたくさんいたくらい。
ツバメじゃ速すぎて双眼鏡で観察もできない。

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帰りにながめると、来るときにジャングルと見えた両岸の景色は、その背後がすべて青々とした稲田になっていた。
いかにも東南アジアらしい素朴な農村風景も見えて、このクルーズがすてきに牧歌的であったことは間違いない。

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こんな調子で、野生動物の宝庫という期待は裏切られたけど、バンジャルマシンにいすわって、近郊の農村地帯を歩きまわり、もっと長期間観察してみたらどうだろう。
わたしはべつの日に、ホテルのすぐわきにある橋の下を見下ろして、メリケン袋を積み上げた堰堤の上に、尻尾の先まで60~70センチはありそうな大きなトカゲを発見したことがある。
大きいといっても同じインドネシアのコモド島にいるトカゲに比べれば、まだ人間の手にあまるほどじゃない。
例のはきだめ運河をクルーズしているときにも1匹見たから、市内にはまだこの種のトカゲが何匹も棲息しているようだ。
最後の写真は、よくわからないと思うけど、はきだめ運河で見たそのトカゲなんだけどね。

オランウータンやスマトラサイやコモドオオトカゲなどの野生動物が見たければ、最初からもっと奥地の、国立公園から近い街を目標にしないと無理なようである。
しかしナチュラリストにとってもっと大きな問題は、カリマンタンでも自然の植生がアブラヤシのような換金植物の農地に変わっていて、野生動物の棲まいがどんどん失われているということだ。
同じ悩みをかかえるアマゾンなどとともに、これは人類の未来を左右する深刻な問題といえる (ナショナル・ジオグラフィックにそう書いてあった)。

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