湯沢温泉/ホテルへ
ホテルは駅から500メートルくらいだから、今度は歩きである。
雪は降り続いていたけど、積もるような雪ではない。
まわりの景色は雪に埋もれているけど、道路上には雪をとかすための水が噴水のように吹き出している。
水たまりに注意しながら駒子さんの続き。
ひょっとするとまだ芸者として初心者だった駒子さんは、金持ちらしい中年男にひいきになってもらいたくて、手管(てくだ)を弄したのかもしれない。
そのほうが可能性としてはありそうだけど、その後の展開をみると本気で惚れているみたいである。
本気で惚れなければ小説が成立しないのだから、このへんのところは大目にみるべきか。
つまり「雪国」は、男の願望を満たすために書かれたフィクションなんだからと。
ところがどうも主人公の島村という男が、えらく影がうすい。
物語の中に、男の家庭についての記述はあまりないけど、生活を全面的に親に頼って、売れない文章を書いてる道楽者で、おまけに妻子持ちだそうだから、よほど散財しないかぎり芸者にモテそうもない男である。
男が若いころの三船敏郎か仲代達矢のようであり、株かバクチで大儲けしたという設定なら、もっとすんなり物語にとけこめたのに、作者はなぜそうしなかったのだろう。
500メートルだからすぐにホテルに着いた。
当時はクチコミなんてものがなかったけど、現在は一億総批評家で、それが氾濫しすぎる時代である。
わたしはこの晩のホテルについて、ある程度こころえていた。
なんだかすごく古くて汚いホテルらしい。
ホテルの名前は、これからさんざんけなすことになるかもしれないから、Hホテルということにしておこう。
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