湯沢温泉/ふたりの女
話が脱線したけど、葉子という娘と、芸者 (且つこの物語のヒロイン) の駒子の関係はどういうことなのだ。
最初のほうではたんたんと読みすすんでいた 「雪国」 が、途中からミステリー小説みたいにおもしろくなる。
ふたりとも魅力的に描かれているのでなおさらである。
ただ葉子という娘の情熱には病的なところもあり、島村も本気にはしない。
どっちかというと陽気な駒子に比べ、葉子は暗闇にひそんで目を光らせている野獣のような娘だそうだ。
彼女は駒子と知り合いなんだけど、友人のようでもあり、憎しみあう関係のようでもある。
いったいどんな事情があるのだろう。
温泉宿でくだらないことを考えているなといわれてしまいそう。
今回の旅では、最初友人も誘ったのだけど、けっきょくひとり旅になった。
でもよかったと思う。
部屋にくすぶって、小説を玩具のようにもてあそんでいるなんて趣味は、とうてい常人には理解してもらえないだろうから。
常人が現実世界しか旅をしないのに対し、わたしは時空を超えて、駒子さんのいた往時の湯沢温泉を旅しているのである。
部屋には、空っぽだけど、冷蔵庫がついていた。
その気になれば、いつでも電気ポットの湯でカップラーメンが食える。
テレビもあるけど、コードを引っこ抜いて iPad やデジカメの充電に使っていたから、いちども観なかった。
新聞も見なかったから、湯沢温泉のわたしは、しばしロビンソン・クルーソーだ。
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