湯沢温泉/縮と雁木
湯沢温泉にもどって、駅中のショッピングルモールをうろうろする。
いろんな郷土の名産が売られている。
新潟の名産といえばお米だ。
コシヒカリも売られていた。
米というのは本来南方系の植物なんだけど、それが雪の多い寒冷な土地に適合して、そのうえ一級品になってしまった。
日本人の農作物を改良する手腕にはほんとうに感心する。
米ができれば酒もできるというのは当然で、モールの中のある店には、百円玉で各地の地酒の試飲ができる機械がずらりと並んでいた。
わたしの知っている酒はほとんどないので、ひとつも味わってみなかった。
でも、みやげに越後の笹団子と野沢菜の漬物を買っておいた。
小説の 「雪国」 は紀行記ではないから、男女のからみがほとんどで、地方の物産や風物についての記述は多くない。
それでも越後縮(ちぢみ) や雁木(がんぎ) のことが出てくる箇所がある。
小説の中には、島村という男がいかに縮の着物に愛着を持っているか、それを大切に扱っているかという記述がある。
着物に縁のない当方にも、大切に扱われれば、着物は親から子へ、子から孫へと、数代にわたって着続けられるものであるということがよくわかる。
雪原に縮の反物をさらす光景は、作業する人たちの労苦さえ無視できれば、越後の初春の風物詩としても美しい。
蛾が卵を産む季節には衣類を干さないようにという、むかしの教訓なども興味のあるところだ。
雁木のある町並みは、わたしもむかし長岡や小千谷あたりの小さな町で見たおぼえがある。
雪を避けて歩けるよう、通りの軒先につらなったアーケードみたいなもので、古くなって黒っぽくなった雁木は、北国の風物としてなかなか味わいのあるものだ。
残念なことに、町全体が近代化され、雪対策もいろいろなされるようになると、これも必然的に消滅する運命になってしまったようだ。
湯沢温泉には、むかしは雁木を必要とするほど人々の往来が多くなかったらしく、小説の中には駒子さんのいる湯沢には雁木がなかったという記述がある。
ショッピングモール内の待合室で無線LANできますという看板を発見した。
しかしパスワードを要求されたから、どうなってんですかと訊いてみたら、外国人の旅行者専用ですという。
わたしも旅行者なんだけどとぼやいてみたけど、パスポートを見せろといわれそうで、それ以上追及できなかった。
その後 Wi-Fiスポットの地図をもらい、駅の正面にある 「井仙」 という喫茶店で利用できることがわかった。
喫茶店だから酒はない。
おかげで湯沢にいるあいだに、苦いコーヒーを2杯飲まされた。
プリンも食ったけど。
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