富山湾/ホテル
この晩のホテルは、駅から徒歩10分あまりの、べつにけなすわけじゃないから名前を挙げると、「マンテンホテル富山」というところである。
なんのそのくらい歩くさというわけで、まだまだ若者の(つもりの)わたしは駅前まえのタクシーを無視し、荷物をごろごろとひきずって歩いた。
3泊4日ていどの旅行だけど、ひょっとすると夜中に漁船で富山湾に繰り出すかもしれないから、わたしは厚手のセーターやネックウォーマーなど、最強のロシア装備をバッグに詰め込んできたのだ。
マンテンホテルは、いちおうビジネスホテルということになっている。
料金は1泊が(わたしの場合旅行サイトのクーポンが使えたので)6000円ぐらいで済んだから、いまどき格安のホテルといっていいだろう。
もっともこれは食事がいっさいなしの料金だ。
ひょっとすると夜中に出かけるかもしれないわたしは、翌朝は昼まで寝ているかもしれない。
すると朝食は食いそびれる可能性があるから、あえて食事なしのコースを選んだのである。
もちろん、たまたま早起きして朝食に間に合った場合は、フロントで食事代を払えばすむ。
道順はまる暗記してあったから、ホテルはすぐにわかった。
11階まである大きな高層ビルで、ホテルのすぐわきまで、富山城の堀割りが続き、満開のサクラ並木も続いていた。
ビジネスホテルはほかにもあるけど、マンテンホテルの売りモノは、最上階にある展望風呂だ。
若いうちならシャワーだけでもいいかも知れないけど、年寄りになると、風呂のあるなしは、疲れをとるのに効果が絶大なのである。
明るいうちに風呂に入ってみたけど、ここから雪をいただいた立山連峰が遠望できて、眺めはなかなかのものだった。
視野の中にこちらより高いマンションが三つぐらいある。
そこからこちらの女性風呂をのぞいたら、さぞかしいい眺めだろうと思ったけど、風呂場のガラスは外から内側が見えないものだそうだ。
とにもかくにも、ホテルは本物の観光ホテルといっても遜色のないものだった。
フロントもちゃんとしたものがあるし、1階には喫茶店もある。
3機あるエレベーターのあたりには、家族連れ、アベック、外国人らしい観光客もうろうろしていたから、ビジネスマンだけの専用ホテルではない。
わたしの部屋はむろん刑務所の独房なみにせまかったけど、バストイレつきで、テレビもデスクも冷蔵庫も、そして無線LANもあるのだ。
これ以上人間に必要なものってあるだろうか。
このスペースを人間ひとり分の最小単位として、世界中のすべての人がこれで満足するようになれば、格差なんてものはとっくに解消してるんじゃあるまいか。
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