富山湾/風の吹くまま
ほたるいかミュージアムをたちまち見学し終えて、また富山駅にもどってきてしまった。
このあとは「風の盆恋歌」の舞台になった越中八尾まで往復するつもり。
読書感想文を書くといった手前と、せっかく富山まで来たのだから、おわら風の盆の催される土地がどんなところなのか見ておきたかった。
そのまえにレンタカーを予約しておかなければならない。
あらかじめ調べてあったトヨタレンタカーに行ってみようとして、たまたま駅のすぐとなりの駐車場に「駅まえレンタカー」の看板を見つけた。
おお、こちらのほうが手っ取り早いと、つねにお手軽な方法に傾きがちなわたしの性格を発揮して、この店でレンタカーを予約した。
車はヴィッツで、これを24時間借りて8000円ぐらい。
いったいなんのために車を借りるのか。
夜中にホタルイカを見物に行くためである。
ホタルイカの漁を見学する観光船に乗れないことがわかったので、あとは海岸でそれが押し寄せるのを見るしかない。
それが押し寄せるのは深夜から早朝にかけてなので、足がないことにはどうにもならないのである。
もしも今夜見られなかったら明日も予約を延長するつもりで、2日間せっせと通えば、いくらなんでもという悲壮な覚悟だ。
どうせ車を借りるなら、八尾駅までそれで行けばいいという人がいるかもしれない。
しかしわたしぐらい車の運転が大っキライな人間はいないのである。
というわけで、レンタカーを予約したあと、富山駅から今度は高山本線の列車に乗り換えて、ゆるゆると行くことにした。
まだ時間は午前の11時半だった。
切符を買って駅のホームに入ろうとしたら、駅員がまだ1時間ちかくありますよという。
列車の発車時刻は12時34分だ。
仕方がないからまた富山城のあたりをぶらぶらしてきた。
もっと明確な目的をもった旅をしろという人がいるかもしれないけど、そんなきっちりした旅行はキライなわたしである。
だらしなく街をぶらついて、やっぱり疲れた。
この日は朝の8時半ごろホテルを出て、まず路面電車を体験し、つぎに富山駅から滑川まで行ってホタルイカをながめ、また富山駅に引き返して、今度は越中八尾まで往復する。
日ごろ怠惰なわたしが、たまにこうやって積極的に行動すると、時間というのは有効に使えばかなり使いでがあるものだなと思ってしまう。
部屋にひきこもって、ものを書いたり、ネットで調べものをしたりしていると、3時間、4時間はあっという間なのに、外へ出て動きまわると、同じ時間でずいぶんいろんなことができるものだ。
ひきこもりというのは、時間をムダにしている人のことをいうのではないか。
ローカル線の旅は楽しい。
東京とちがって車内はがらがらだし、べつに沿線に見るべきものがあるわけでもなくても、やはり楽しい。
このあたりでこそ、チューリップ畑が見られるのではないかと期待したけど、まわりは平凡な田園地帯で、あいかわらずチューリップのチの字もない。
怒るぞ、ホンマ。
富山駅から越中八尾駅までは、駅にして5つ目で、時間はせいぜい20分ぐらいだ。
下りホームと上りホームを結ぶ跨線橋を渡っているとき、この駅にはふだん使われていないもうひとつの跨線橋があるのに気がついた。
これは9月の風の盆のときに、押し寄せる観光客を東側の駐車場に誘導するためのものらしい。
祭りの当日は、まあ、たいそうな混雑になるようだけど、この日のこの時間に八尾駅で下車した観光客はわたしだけだった。
駅まえに立ってまわりをながめる。
小説では坂の多い町と書いてあるのに、駅前には平坦な道路がはしっていて、とても風の盆にふさわしい情緒ゆたかな町のようではなかった。
がっかりしたけど、せっかく来たんだからというわけで、そのへんをぶらぶらしてみた。
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