カジノ必勝法
ぜんぜん「旅から旅へ」というカテゴリーに入らないけど、もののついでに沢木耕太郎さんの「深夜特急」にまた触れてしまう。
わたしは賭け事をやらない。
勇気がないということもあるし、賭け事の大半が偶然に賭けるだけで、自分の頭をふりしぼって結果を出せるわけではないらしいから。
でも賭け事にすなおに熱中する人を見ると、熱中できない自分がなにか大きなハンデを背負って生まれたようなくやしさもある。
ところで賭け事っていうのはほんとうに偶然に賭けるものだろうか。
なにかで読んだ文章によると、ある財閥のお嬢さんが、知り合いといっしょにカジノに行ったそうである。
この知り合いというのはカジノに顔のきく有力者で、ディーラー(サイコロやルーレットの球を操作する人)に対して、この人はわたしの友達だから勝たしてやってくれといったそうだ。
するとじっさいに、ほどほどに勝てたという。
このお嬢さんは、カジノというのはそういうところかと納得したというのである。
香港にしばらく居すわった「深夜特急」の主人公は、当然のようにマカオに立ち寄り、当然のようにカジノにも顔を出す。
最初は見ているだけだったけど、そのうち必勝方法があるのではないかと推理を働かせ始める。
サイコロの目が大か小かを当てるゲームがある。
前記のお嬢さんのことを主人公は知らないはずだけど、じっと見ているうちに、どうやらディーラーは自由に目を操作できるらしいことを悟る。
それならディーラーのくせを呑み込んでしまえばいいではないか。
そう考えてディーラーをじいっと観察し、あるていど効果を上げるんだけど、そのうちディーラーが交代してこの方法はおじゃんになってしまった。
つぎに彼が考えたのはゾロ目を見抜くことである。
詳しい説明ははぶくけど、ただ大小に賭けさせるだけでは、客のあいだをお金が行ったり来たりしているだけで、カジノの儲けにならない。
そこでゾロ目が出た場合だけ、カジノ側の総取りになる規定があるのだそうだ。
三つのサイコロの目がそろうなんてことはめったにないから、このときゾロ目に賭けていれば客も大儲けできる。
だから主人公は、ディーラーがゾロ目を出すタイミングを見計らって、相手の裏をかこうとする。
賭場が過熱して客が大金を賭ける。
そういうときにゾロ目を出せばカジノは大儲けだ。
だから自分もそういうときにゾロ目に賭けてやろう。
主人公は賭場の過熱具合を慎重に見きわめて、ここぞというときになけなしの金をぶちこむのである。
で、どうなったかというと、少ない旅行費がますます少なくなっただけだった。
カジノのディーラーも百戦錬磨のプロだから、そんな推理をする客がたまにいるということをとっくに承知しているのだろう。
やっぱりカジノなんて素人が勝とうと思って出かけるところじゃない。
それでもこのあたりの描写は、この本のハイライトのひとつといっていいくらいおもしろい。
敗北感に打ちひしがれてカジノをあとにする主人公だけど、じつはカジノ必勝法というものも存在するのである。
この本の中に、姉妹らしい2人連れが、みごとにディーラーの裏をかく場面が出てくる。
彼女らがどんな手を使ったのか、興味のある人は本を読んでみればよい。
べつにむずかしいことじゃないので、それができるかどうかはあなた次第だ。
でも、そもそもバクチで熱くなるような人には無理だな。
添付した写真は、両方ともマカオで、下はカジノと、顔にぼかしを入れる必要はないんだけど、このブログでおなじみの金持ちのO君。
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