タイ/またレストラン
まだ雨は降っていたので、ビールでも飲んで雨宿りのつもりで、帰りにもう一軒のレストランに寄った。
客はいなかったけど、店内にさまざまな民芸品が山と積まれ、なかなか個性的な店である。
雨が降っているから奥のほうの席に座ろうとしたら、店のマダムがいちばん店頭のテーブルに座れという。
客がひとりもいないと不景気な店と思われて、ますます客が寄りつかないから、つまり客寄せパンダにされたらしい。
宣伝料よこせ。
このマダムというのは花柄のムームーを着た、厚化粧の、なんとなくがめつそうな中年女性である。
わるい予感がしたけど、まだ結果がわからないのだから、外見で判断して店を出るわけにはいかない。
ビールを注文すると、上半分が金属、下半分が陶器という変わったジョッキでもってきた。
写真を撮ろうとするとダメという。
ビールだけではつまらないから、おつまみ代わりに、たまたま看板に写真の出ていたカオソイというタイ料理を頼んだ。
マダムがそれを作るため店の奥に引っ込んでいるあいだ、タブレットでビールの写真を撮ってしまった。
ザマミロ。
店が個性的だから、通りかかった観光客がみんな感心して眺めていく。
白人の女の子たちが店内を指して、なにやら言い合っているときなどは、わたしのうわさをされているみたいで、いい気分だった。
イタリア人らしい(あくまでわたしの主観だけど)家族が通りかかったときは、カメラを持った父親が、店の写真を撮りたそうにうろうろ。
しかし店先で仏頂面をしているわたしを見て、あきらめたらしいのは気のドクだった。
カオソイのは有名なタイ料理だそうだけど、生のモヤシ、レモンのスライス、ハーブなどと、まだ湯にひたしてないインスタントラーメンみたいなものが上に乗っている。
それをほじくると、下にカレー味の麺が入っているものだった。
べつに感動するほど美味しいものではない。
写真を撮っていいかと聞くと、これはOKだという。
ついでにあなたの写真もいいかというと、ダメダメといいながら、モデルのようなシナをつくる。
ここに彼女の写真があるのはそういうわけだ。
でも顔はいちおうぼかし入り。
勘定をしてもらったら、やっぱりぼられたような気がする。
日本と比較すれば安いことはまちがいないのに、途上国に行くと、ついわたしもその国の住人としての経済観念になってしまうのだ。
文句もいわずに店を出た。
夜になってこの店のまえを通ったら、欧米人のグループが盛大に酒盛りをしていた。
彼らもぼられたのだろうか。
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