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2016年8月17日 (水)

タイ/帰国

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帰国する日。
あらかじめ下見をしていたおかげで、空港までBTS、メトロ、ARLなどを乗り継ぎ、まったくなんの問題もなかった。
問題があるとすれば、まだお腹の調子が回復していないということ。
でも「深夜特急」の沢木耕太郎さんも旅のあいだにいちど大病をしているし、病院にかつぎこまれなかっただけで平穏だったと思わなくちゃ。
これまでつぎ込んだ旅行保険もバカにならないから、いちど入院してモトを取り返したいという気持ちもあることはあるんだけどね。

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腹へったから空港のレストランで特別注文の食事をする。
特別注文といっても、メニューの写真を見て、肉いらないから野菜だけにしてくれる?といって、青物野菜の料理を注文しただけである。
出てきたものは油でさっと炒めたあんかけ料理になっていて、一見すると美味しそうだけど、予期していたより固くてまずかった。
わたしの歯が軟弱なのか、タイの人の歯が丈夫なのか。
ということを中国でも思ったことがあるから、これはやはり野菜をあくまでやさしく食べるという、日本の料理で育ったわたしの欠陥みたい。

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あいかわらずバカな旅をしていると思う人がいるだろう。
わたしだって感心しているわけじゃないけど、でも今回の旅でチェンマイの街がどんなところなのか、おおかたの知識は身についた。
自転車でも借りればもう地の果てまでも行けると思う(バイクでは地の果てから転落するおそれがある)。

バンコクでもそうだ。
有名な観光名所などひとつも見なかったくせに、つぎの機会には乗り物を自由に乗り継いで、たいていのところには行く自信がある。
つまり今回の旅は、わたしにとってあくまで下調べなのである。
わたしはそのうちまたタイに行くつもりだ。
めったに行けないところだから、なにもかも見てこようと考えるビンボウな人に比べれば、ただの下見のために金をつぎこむわたしの旅の、なんと豊かなことと自己陶酔しちゃうけど。

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でもつくづく考える。
わたしも歳をとった。
あちらこちらで出会ったタイ娘や欧米人の娘たちの美しいこと、健康的なこと。
それなのにわたしは彼女らに同情されるのがせいぜいの、みじめな年寄りになってしまったようだ。
楽しいはずの旅も、冷静に考えれば、自分の老いと向き合う旅になってしまった。

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わたしは老いるが怖ろしい。
死ぬことではなく、自分の足で自由にどこにでも行けなくなるのがコワイ。
自分の目で好奇心を満たせなくなり、若い女の子から見向きもされなくなる自分。
年寄りへの境界線を一歩踏み越えたという自覚。
足が弱って、このまま羽根をむしられた鳥のように、現実という檻の中に閉じ込められるのはイヤだ。
しかしいくら努力したって、遅いか早いかの違いだけで、その日は確実に来る。

だからわたしは近いうちに、せいぜい元気なうちに、もういちどタイに行こうと思う。
ほかにも行きたい国はたくさんあるけど、せっかく下見をした国を、これだけで終わらせるのはモッタイナイ。
いまのわたしには、見知らぬ街をよたよたと彷徨っているとき以上に、生きがいを感じるときはないのだから、旅は人生を先にすすめる踏み石みたいなものなのだ。

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終わりにお腹のごろごろの追伸だけど、帰国した翌日にピタリと止んだ。
なに、コレ。

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