タイ/日本語看板
お腹の調子はおかしいけど、頭のほうはいくらかすっきりしたし、トイレに行く頻度も減ったので、またホテルの周辺の偵察に出る。
出がけにホテルの近くで、大胆に裾をカットしたチャイナドレスの美人といっしょの、日本人男性らしき人物と出会った。
白髪の、どこかの大企業で部長クラスを勤め上げたような男性で、ラフな服装からすると、このあたりに住まわっているらしい。
若い娘におぼれるようなタイプにも見えないし、おそらく本人も金の切れ目が縁の切れ目と割り切って、若いころの小泉今日子によく似たこの娘と同棲しているのではないか。
ひょっとすると日本に奥さん子供もいるのかも。
それなり功なり名を遂げたあとで、あとは年金と貯金で新しい人生を楽しむことにしたのなら、うらやましい生活といえる。
先にホテルの周辺は新宿2丁目みたいと書いたけど、ホテルのまえのソイ(路地)を200メートルほど行くと、スカイトレイン(高架鉄道)のあるスクムウィット通りに出る。
それをさらに300メートルほど行けば、ホテルからいちばん近いプラムポン駅だ。
ここまでのんびり歩いても10分ほどで着く。
ホテルのあるソイの出口には、オレンジのユニフォームのバイクライダーがたむろしていた。
彼らのバイクは、じつはタクシーである。
渋滞のひどいバンコクでは、早くて確実ということで、重宝されている乗りものらしい。
もっとも安全までは保証してくれそうもない。
とりあえずホテルやプラムポン駅のあたりをぶらぶらしてみた。
プラムポン駅に隣接して大きなショッピングモールがある。
日本の一流デパートみたいで、どうせわたしに買うものがあるはずがないと、入ってみなかったから、内部についてはわからない。
スクムウィット通りにはスーパーもある。
品揃えは豊富で、コンビニとは比較にならない。
こういう店をじっくり観察すると、この国の事情がいろいろわかってきておもしろい。
酒は缶ビールが安いくらいで、ウイスキーやワインのような輸入ものはかなり高かった。
食べものは日本のようにパック詰めで売られているものが多い。
食事を自主的に控えめにしているわたしは、マンゴーと柑橘類のパックを買っておいた。
ふたたびホテルのあるソイまでもどってきた。
ホテルの周辺には妖しい店ばかりではなく、やけに日本語の看板が多い。
「ラーメン」「やきとり」から「整体・フットセラピー」「七洋水産」「東京メガネ」などなど。
ここでそんな日本語看板の特集をしてしまう。
ほかにも「古本買います」なんて看板もあって、まるで異国で出会った日本人に親しく肩を抱かれたような気分。
AV男優・島袋浩の店なんてのもあった。
わたしは島袋クンなる人物を知らないけど、AVでしこたま稼いでバンコクに店を出したのなら、立志伝中の人ではないか。
バンコクでは有名な歓楽街のパッポン通りなんてとこを見物に行こうと考えていたけど、これなら近所だけで間に合ってしまいそう。
このあといったんホテルにもどり、部屋で地図をながめて思案する。
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