疲れた
天城山から帰ってきた。
天城山という名前の単独の山はないので、正確にいうと、天城山塊の中の万二郎岳。
他の山まで縦走をしようってわけじゃないから、そんなに急ぐ必要もないのに、朝の7時から登り始めて、昼まえには下山していた。
メンバーの中に、さらに峰続きの万三郎岳まで行ってみようという人間はひとりもいなかった。
つまりわたしたちは人生に疲れきったおじさんばかりだったのだ。
万二郎岳は、実感としては高尾山よりいくらか楽という感じ。
登り始めは人工林と自然林のまじる渓流ぞいの道をゆくけど、山頂が近づくにつれ、闊葉樹の多い自然林になり、もうすこしあとになれば、紅葉がみごとなんじゃないかと思われる。
足もとには白いヨメナの花、渓流ぞいには紫色のトリカブトの群落が見られた。
こういう森の中を歩いているだけで、しみじみと幸福を感じてしまうメンバーばかりである、わたしたちって。
ひと目見ただけで、ふだんあまり見かけない樹相の木が多いことがわかるけど、その中で目立ったのは、赤い木肌が特徴的な木と、粉をふいたように幹が白い木。
この両者とも奥多摩、奥秩父では見たことがない(ような気がする)。
帰宅して調べてみたら、赤い幹の木はビランジュ、別名バクチノキというものらしい。
赤い木肌がバクチで身ぐるみはがされた人間の風情に似ているんだそうだ。
白い幹のほうは、誰かがイタヤカエデって名札がついてましたよという。
そんならそれほどめずらしい木ではないし、うちの近所でも見たことのある木だけど、伊豆あたりでは、古木になると幹のまわりが白いカビにおおわれてしまうのだろうか。
とまあ、こんなふうにいっぱしの博物学者みたいなことをほざきつつ、登山をするのがわたしの趣味である。
山頂は東側がものすごく急な斜面になっていて、冷たい風が吹き上がっていた。
ここでおにぎりを食べた。
幾人かのメンバーが持参した弁当を、みんなで分け合って食べたのである。
というのは、どこかのコンビニに寄るはずが、気がついたときにはもうそんなもののない地域に入り込んでいて、わたしも含めて食料を持参しないまま登ってしまった輩が多かったせい。
そしてもちろん、登山のあと、夜は熱川の温泉宿で飲んで騒いだ。
いまどきめずらしいくらいボロい宿だったけど、そのぶん安いから、テント泊だと思えば上等とだれも文句をいわなかった。
翌日は城ヶ崎海岸をぶらついて帰京した。
おじさんたちにはひさしぶりのいい運動だった。
アー、脱力。
なんか書いているほうもアホらしくなるけど。
帰宅してから見たら、カメラがソフトフォーカス・モードになっていた。
けっしておじさんたちを相手に、意図してロマンチックな写真を撮ろうと思ったわけじゃありません。
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