モーニン
ジャズ・ベーシストのチャーリー・ミンガスに「モーニン」という曲がある。
わたしはミンガスが好きなので、この曲と、なぜ彼が好きかということを音楽の専門家以外の言葉で語ってみよう。
わたしがジャズの世界にのめりこんだのはロックの影響だった。
ストーンズやクリームのライブ演奏を聴いて、即興演奏のおもしろさに目覚め、なおかつクリームの激しいインタープレイに衝撃を受けたのがきっかけだ。
インタープレイというのは、演奏者が他の演奏者とケンカをするような演奏と、まず簡単に説明しておく。
わたしはこういう演奏がほかにもないかと、いろいろレコードを漁ったけど、ロック畑にはクリームを超えるようなインタープレイはとうとう見つからなかった。
それならジャズはどうだ。
ジャズなら即興演奏の宝庫じゃないか。
そう思ってこの分野の音楽を聴き始めたんだけど、最初は失望した。
わたしがジャズを聴き始めたのはビ・バップはなやかなりしころで、聴いてみればわかるけど、これは演奏者が順番に、交代で即興演奏のソロをとるもので、とてもケンカとはいえないお行儀のよいものが多かった。
もっといろんな楽器が複雑にからみあいながら進行する曲はないものか。
若いころ先輩から、ミンガスの「直立猿人」を聴かされたことがある。
当時はジャズのジの字も知らなかったので、なにがなんだかわからなかったけど、ジャズに関心を持ったころ、あらためてこの曲を聴いてみた。
ケンカとはいえないけど、そこではじめて順番にソロをとるばかりがジャズではないことを知った。
ミンガスという人は孤高の人で、世間がビ・バップ一辺倒だった時代に、複数の楽器による、ハーモニーを主眼とした演奏を開拓した人である。
つまり主役がトランペットを吹いているとき、サックスやトロンボーンが横からちょっかいを入れるようなものだ。
これがおもしろくてわたしはミンガスの熱烈なファンになってしまった。
もちろんこういう演奏は、オレがオレがという名人気質の演奏者の多いジャズでは、ヘタすると本物のケンカになってしまうから、リーダーにはテクニック以外に腕力も必要だ。
ミンガスのテクニックを聞くには「モーニン」がよく、腕力を知りたければ、メンバーをぶっ飛ばしたというエピソードを聞けばよい。
オリジナルの「モーニン」も乗りやすい曲だけど、最近 YouTube でこれとは違ったライブ・バージョンを聴いた。
もう、メンバーがやけになって同僚を吹き倒そうとしてんじゃないかと思うようなケンカごしの演奏である。
それでもところどころに「モーニン」のテーマのようなものがはさまるから、これがちゃんとリーダーの統率のもとに演奏されていることがわかる。
ところで、あとになって気がついたけど、YouTube 上のこのライブ演奏はひじょうに人気があるらしく、今日現在でアクセス数が1300万以上になっていた。
やっぱりトラは死んで皮を残したってことかも。
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コメント
酔いどれ李白くんが中学生の頃はアメリカンポップスの事をジャズと言ってました。勿論ポップスと言う言葉はありませんでした。ジャズ喫茶の銀座ACBでも、中尾ミエさん達が「可愛いベイビー」等のジャズを歌っていました。 カトーダソクより
投稿: カトーダソク | 2016年12月31日 (土) 11時12分
すいませーん。ハンドルネームに直しました。以後はこの名前でお願いします。
投稿: 酔いどれ李白 | 2016年12月31日 (土) 11時48分
お互いの無事を確認しあうために、まだボケてないという証明のためにも、たまにコメントをお願いします。
投稿: 酔いどれ李白 | 2016年12月31日 (土) 11時54分