剣南春
知り合いが上海に行ってきた。
行くまえになにか買ってきてほしいものがあるかと聞かれたから、そうさなと考え、むかし中国に入り浸っていたころ知った「剣南春」という酒を頼んだ。
中国では紹興酒が有名だけど、それは醸造酒で、本来は茅台酒などに代表される蒸留酒王国である。
値段をみればわかる。
紹興酒は庶民的な値段で呑めるけど、茅台酒の高級なやつになると、日本人でさえビビるような値段だ。
しかもわたしが中国によく行っていたのは、まだ改革開放政策がようやく軌道に乗ったころで、酒造メーカーが女や下戸に気を使わない時代だったから、その本来の味と香りは濃厚に輝いていた。
いまでもそうかもしれないけど、酒の原点というべき魅力を楽しみたければ、手近なところでは中国に行けばよい。
ところで上海に行った知り合いだけど、2泊3日で蘇州まで行ってくるというから、安いだけが取り柄の忙しいツアーに違いない。
たぶん街の酒屋で「剣南春」を求める時間はないだろう。
すると彼女は帰りの空港で買おうとするにちがいない。
そう思って調べてみた。
あるサイトの情報によると、空港の免税店では度数が40度以上の酒は置いてないそうである。
「剣南春」は50度以上あるのだ。
だから彼女から、やっと買ってきたよといわれてもあまり期待していなかった。
家に持ってかえって箱を開封してみた。
やけに軽いのが気になったけど、パッケージは頑丈だし、箱からボトルを取り出した瞬間、「剣南春」特有のあまい香りが部屋中に立ち込めたから、これは本物だと確信した。
でも同時に、なんだ、これはと失望したのも事実。
わたしの知っている「剣南春」のボトルは500mlだったけど、みやげにもらったのは、なんと100ml 。
ボトルの容量はテーブル用の醤油の小瓶より少ないくせに、これで5千円ちかくするのだ。
ちくしょう、こういう手があったかと怒り狂ったけど、でもと思い直した。
これはメーカーだけの責任ではあるまい。
おそらく値段の半分くらいに、空港の免税店に置かせてもらうための、役人や役所への賄賂が含まれているんじゃないか。
中国というのはそういう国であると自分を納得させ、これがどうしても飲みたいなら、やっぱり自分で現地におもむき、街の酒屋で購入しなくちゃいけないなと思う。
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