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2017年1月 3日 (火)

またゴッドファーザー

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この正月に、わたしが毛嫌いしている「ゴッドファーザー」がまた放映された。
新しいレコーダーを買って、BSが本来の美しさで映るようになってから初めての放映だから、いちおう録画してみたけど、映画そのものはあいかわらずアホらしい。
アホらしいと思うなら観なけりゃいいんだけど、やっぱり観て、それで怒り狂っているのは、いまだにこれを大傑作だと信じている人がいるからだ。

まあ、けなすにしても、その理由をあきらかにしないと、たんなるいちゃもんと思われてしまう。
だからこの映画のどこがアホらしいのか説明してみよう。

映画はまずイタリア式大家族の結婚式の場面から始まる。
華やかな式場のようすと同時に、マーロン・ブランド扮するドン・コルレオーネの裏社会における実力ぶりが描かれる。
義理人情と家族のきずなを大事にするマフィアと、その残酷さを並行して描いたってことのようだけど、うれしがるほど目新しい表現じゃない。
だいたいこのときの結婚式って、派手なわりにだれの結婚式だったのか、ぜんぜん印象に残らない。
シチリア人の性格を知りたければ、ちょっと古いけど、ヴィスコンティの「山猫」あたりを観るほうがよっぽどいい。

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やがてギャングの抗争になり、父親のコルレオーネが襲撃されて重傷を負う。
ところが息子のマイケルが病院に行ってみると、護衛がひとりもいない。
護衛は敵方のギャングに買収された警察官に追い出されたってことらしいけど、ちょっと考えられない展開である。
命を狙われているボスを放り出して護衛がひとりもいなくなるなんて、アメリカのギャング界ではそういうことがあるのかしら。

しかもまもなく暗殺者たちがやってくるのだ。
マイケルの機転で危機を脱出すると、今度は買収された警察官(スターリング・ヘイドンがみっともない役で泣かせる)がやってくる。
警官たちにマイケルがボコられているとき、やっと兄貴のソニーや弁護士のトムたちが駆けつけてことなきを得る。
ここでことなきを得るくらいなら、どうして護衛が追い出されるとき弁護士が抗議をしなかったのか。
そもそも政治家に顔がきき、義理人情で政財界とも緊密につながった大物であるはずのコルレオーネが、なんでそのへんのチンピラみたいな警部補に裏切られなくちゃいけんの。

これは一例にすぎないけど、総じて調子のよいご都合主義が多すぎる。
コルレオーネは麻薬に手を出さない思慮深いギャングであり、敵役はそうではない。
善玉悪玉の色分けも、子供にでもわかるくらい単純だし、そのくせボスの専用運転手だとか、義理の弟だとか、どうでもいい三下を殺害するシーンだけはやけにていねいな描写だ。

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ブランドが死ぬシーンは、幼い孫と遊んでいるとき心臓発作を起こしてということらしいけど、これもとってつけたような場面で、お涙チョウダイが見え見え。
家族愛を描いた映画なら、本場のイタリアに秀作が数え切れないほどある。
そこまでのプロセスがいいかげんで、かたちだけ整えて、これが家族のきずなですなんて言われたって、はいそうですかってわけにはいかないのだ。

この映画ではマーロン・ブランドはオーデションで役を手に入れたという。
いくらこの当時落ち目だったとはいえ、マーロン・ブランドという米国のカリスマ的俳優を、監督のコッポラは同じ映画人のくせして知らなかったのだろうか。
あまり有名でない俳優たちの中に、そこにいるだけで存在感を示す役者をはめこんで、映画にハクをつけるというのは、むかしからハリウッドの常套手段だし、ブランドの凝りに凝った役作りが映画の宣伝に一役かったところをみると、どうもオーデションうんぬんは製作陣の捏造みたいな気もする。
ブランドを主役にするのは最初から既定のコースだったんじゃないか。

短気な兄貴のソニーが、敵に買収された妹の亭主に図られて、機関銃で蜂の巣にされたあと、まじめな性格の弟マイケルが、兄貴のあとを継いでファミリーのボスに成り上がる。
成り上がったあとの弟の手際のよさ。
日本のヤクザ映画でも、耐えに耐えた主人公が、最後に敵地に乗り込んで相手方を切りまくるというのはよくあるけど、その場合はこちらも殺されるかもしれないという覚悟でやっている。
ところがゴッドファーザーでは、放たれたヒットマンは一方的に相手方を殺戮するだけ。
そんな簡単に片付けられるなら、なんでもっと早く殺らなかったのといいたくなってしまう。
ようするにカッコよさだけを追求した、安っぽい劇画みたいな映画というのが、わたしのこの映画の評価だ。
何度観てもアホらしく、何度観てもやっぱり腹がたつ。

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