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2017年2月 2日 (木)

雪まつり/書物

 

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わたしはもうすぐ札幌の雪まつりを観に行く予定だけど、例によってホテルで読む本を考えた。
雪の中をうろうろするより、ホテルで風呂につかり、部屋でビールでも飲んでいる方がいいという、はなはだ不真面目な旅人であるわたしは、一方で典型的な夜型人間なので、夜中に目がさめると退屈してしまう。

うーんと考えたあげく、34年前の旅でもリュックにぶち込んでいった、更科源蔵の「北海道の旅」という文庫本を思い出した。
この本は文庫本でせいぜい2から4ページていどの独立した記事がいくつも並んだものなので、どこから読んでも、どこでやめてもかまわないというところが、気ままな旅の道づれにふさわしい。
記事はすべて、せいぜい昭和までの北海道に関するもので、現代の旅の参考にはならないけど、そのかわりこれはとっくに失われた、現存しない土地へのバーチャル旅行を味あわせてくれる本でもあるのだ。

著者の源蔵さんはアイヌ研究者としても知られる詩人で、この本ではアイヌの伝承や開拓の歴史から始まり、各地の風土記というべきエピソード、そして文章のいたるところに石川啄木や与謝野晶子夫妻、岩野泡鳴、島木健作など、北海道を旅した先人たちの詩や歌が挿入され、日本の北欧というべき土地が、哀感と、さわやかな詩情をもって語られる。
わたしには旅の思い出とともに忘れられない本なのである。

 

H003

で、またこの本を旅の道づれにと思ったけど、終活中のわたしはとっくにこの本を処分してしまっていた。
でも、たかが文庫本だ。
なければまた買うさと、ネットで新潮社を検索してみた。
ところがこの本はすでに廃刊になっているらしい。
それなら図書館に当たればいいと思い、調べてみると、わたしがよく利用する武蔵野プレイス(武蔵野市営図書館)には置いてなかった。
しかし本屋にも図書館にもないならオークションがある、ネット上の古本屋がある。

アマゾンをのぞいてみると、この本がいくつか出品されていることがわかった。
値段は1円である。
これじゃ送料のほうが確実に高い。
梱包する手間を考えたら割があいそうもないけど、ここは出品した本屋の、どんな本でも読者がいるかぎり、儲けを無視してでも提供しようという善意を信じよう。

ということで更科源蔵の「北海道の旅」を持参することにした。
詩というものは音楽と同じ脳中枢に訴えるものだから、この本とともに旅をするということは、わたしにとってiPodを持って旅をしているようなものだ。
いまは本物のiPodがあるけど、むかしはまだアップルどころか、パソコンすらなかった時代なんだけどね。

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