白楊
散歩に出かけたら、飛行場のわきのとある木の根もとに、白い綿毛のようなものが降り積もっていた。
木というのはセイヨウハコヤナギ(ポプラ)だから、これはポプラの種子らしい。
ポプラの綿毛というと、わたしは初めてシルクロードを旅したときのことを思い出す。
中国ではポプラを白楊といって、シルクロード(敦煌から新疆ウイグル自治区方面)にはこの木が非常に多い。
薄汚れた蘭州の街から夜行列車に乗りこみ、朝目をさましたら、信じられないくらい空気が清明な土地にいた。
美しいオアシスの村にポプラが高々とそびえ立ち、駅のホームに降り立つと、白いいふわふわとしたものが風にのって宙を舞っていく。
そのころのわたしは、タンポポの綿毛は知っていたけど、ポプラからも綿毛が生じるということをぜんぜん知らなかった。
その後、わたしが敦煌の莫高窟のほとりで、迎えに来るはずのタクシーを待っていたときのこと。
あたりに綿毛が飛びかっていたので、いったいどこから飛んでくるのかと不審に思ったわたしは、そばの白楊のこずえを見上げてみた。
近くにあって綿毛を生じさせる可能性のあるのは、その木ぐらいしかなかったのだ。
ても葉のあいだをすかしても綿毛なんか見当たらない。
降り積もった綿毛の量からすると意外なくらい、木の枝についているときのポプラの綿毛は目立たないのである。
つい綿毛に誘発されちゃったけど、両側に白楊のそびえるシルクロードの街道を、自転車でさまよっていたころの自分がなつかしい。
最後の写真は、20年前に新疆ウイグル自治区で撮ったもの。
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