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2017年10月30日 (月)

内陸水路での小さな出会い

ずっとむかしにテレビを点けたら、たまたま日本人と欧米人がなにか対談をしていた。
ふたりともどこかで見た顔だけど思い出せない。
ただ、ひじょうに知的な顔をした欧米人に比べると、日本人のほうはどうしても貧弱である。
そのうちこの日本人は大江健三郎であることを思い出した。
ノーベル賞作家を貧弱といっちゃ申し訳ないけど、もう30年も前のことで、当時はまだ健三郎サンも若く、いまほど貫禄がついていなかったのだ。

健三郎サンのことはいい。
このときの対談相手がアメリカの作家カート・ヴォネガットで、知的で魅力的な風貌の人だったことを記憶している。
こんなのと対談させられた健三郎サンのほうが気のドクである。

風貌のこともいい。
先日、ヴォネガット原作の「スローターハウス5」という映画が放映されたので録画しておいた。
映画はざっと早送りで観たけど、難解で、つまりわけのわからないものだったので、これもいい。

わたしはヴォネガットのファンである。
といっても彼の小説はほとんど読んだことがない。
読んだのはサンリオ(現在はハヤカワに移ったようだ)から発売された「ヴォネガット大いに語る」というエッセイ集だけ。
こころもとない読書歴だけど、これを読んだだけで作者がそうとうの皮肉屋、諦観主義者であることがわかった。
ヴォネガットは大戦中にドレスデンで捕虜生活を送り、そこで連合軍の爆撃で街が壊滅するのを目撃した。
すぐれた知性が悲惨なものを目撃すると、皮肉屋になるのは当然の帰結らしい。

エッセイ集のなかでいちばんおもしろかったのが、「内陸水路での小さな出会い」という、文庫本で16ページほどの短編だった。
知り合いのクルーザーの回送を手伝って、米国の東海岸にある水路を航海したときの紀行記だけど、ちょっとした海洋小説のおもむきがある。
わたしはこれに匹敵する海洋小説を、メルヴィルの「白鯨」や、ジャンルは異なるけどダーウィンの「ビーグル号航海記」、さらに別ジャンルで開高健の「オーパ!」ぐらいしか思いつかない。

小説の感想文に頭を使っても一文にもならないから、これ以上説明しないけど、おもしろい海洋小説を読みたかったら「内陸水路での」を読んでみたらいい。
分量をパーセントにしたらほんのわずかなので、新品の本を買ってまで読めとはいわない。
図書館か、オークションで古本を探すこと。

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