青森/鯵ヶ沢
津軽平野をうろうろしたあと、思い出のある鯵ヶ沢というところへ行ってみることにした。
その思い出というのが、若いころ、仕事でこのあたりに来たことがあるというだけ。
そのときおぼえているのは、海を見下ろす街道沿いに焼きイカを売る屋台が並んでいて、純情青年だったわたしは、若いきれいな娘のいる店に入れず、そのとなりにあったおばあさんのやってる店でそれを食ったということ。
なにしろ40年以上前の話で、はにかみ屋だったんだよね、当時のわたしって。
おどろいたことにその店がまだあった。
屋台よりいくらか立派な店になっていたけど、海を見下ろす街道沿いということで、まちがいがない。
おばあさんはとっくに亡くなっただろうけど、あのときの娘はどうなっただろうと、今回の旅でゆいいつ感動らしいものがあったのはココだけ。
その後、鯵ヶ沢にある「海の駅」に立ち寄ってみた。
こういうところで地元産の海産物を見るのは楽しい。
むかし来たころはもっとひなびた漁港だったと思うけど、いまではこのあたりにも新建材の住宅が増え、地元の奥さんまでが料理の材料を買いに来ていた。
時間をもてあまして、港の岸壁に行ってみた。
雨はまだぽつりぽつりと降っていて、空も海もどんよりとしている。
イカ釣り用の集魚灯がならんだ漁船のかたわらで、釣りをしている人たちがいた。
イワシのような小魚が入れ食いで、カモメや野良猫がおこぼれを待っているのがおもしろかった。
さて、つぎはどこに行こう。
むかしの訪問では、弘前から鯵ヶ沢に向かう街道ぞいにリンゴ畑が多かった。
リンゴ畑のあいだに番小屋のような建物が建っていて、それが欧州のどこかのような変わった景色だと思った記憶がある。
それをもういちど確認しようと、弘前方面に向かって走ってみたけど、どうも雰囲気がちがう。
景色というものは天候によって劇的に変わるものである。
わたしたちが想像するスペインや南仏の風景は、雨の日にはけっして見られないものなのだ。
あの日あのとき見た景色の再現は不可能だろうと考えて、とちゅうで引き返した。
この間、わたしは岩木山のちかくを走っていたはずなのに、それはとうとう一度も姿を現さなかった。
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