ハートのかたち
BSの「世界入りにくい居酒屋」という番組が好きだけど、最新のそれにクロアチアのザグレブという街が出てきた。
ここは小ウィーンとも称される美しい街で、市内のあちこちにハートのマーク(♡)が見られるそうである。
ハートのマークは人間の心臓がモチーフで、ふつう幸福のシンボルとしてとらえられている(異説もあるけどわたしはそう信じていた)。
このマークを知らない人はまずいないはず。
ところがこの番組を観た瞬間、ちょっと不吉な気分が頭をかすめた。
トランプの模様にも使われているくらいだから、このマークの起源はそうとうに古そうで、解剖学が発達するよりもずっと以前から使われていたんじゃないか。
ひとくちにハートのマークといったって、現物を見なければデザインはできないだろうから、これを最初に考えた人は、じっさいに人間の心臓を見たことがあるということになる。
X線が発見されてないころ、どうやって心臓を見ることができたのか。
こう考えると、不吉な気分がじわじわと。
戦争や内乱の絶えなかった欧州では、首をちょん切られたとか、腹を切り裂かれた死体を見ることはめずらしくなかったと思われる。
罪人の処刑にしたって、現在とは比較にならないくらい残忍な刑罰が多かった。
つまり当時の人たちが、人間の心臓がどんなかたちをしているかを見る機会は、けっして少なくなかったと思えるのである。
わたしがそんなことを考えたのは、クロアチアが、まだほんの20年前まで、民族浄化という言葉がはじめて使われた、血で血を洗う紛争の当事国だったからかもしれない。
幸か不幸か、そんな歴史はあっという間に忘れ去られ、いまではザグレブも風光の明媚な観光都市だ。
わたしがもっと若ければ、いちどは行ってみたいところだから、まあ、これはいいことなのだろう。
でもわたしは想像力が豊富なので、クロアチアなんて国名を聞くと、まだピクピクと動いている人間の心臓をまえに、デザイナーたちがああしようこうしようと頭をひねっている場面を想像してしまう。
食事のまえにこのブログを読んだ人がいたらゴメンナサイ。
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