希望
昨夜の「1本の道」という番組にモンテネグロが出てきた。
そのまえの「入りにくい居酒屋」にはクロアチアのザグレブだ。
知っている人は知っているだろうけど、これらの地名は、民族浄化という言葉がはじめて使われ、第二次世界大戦以降で最悪といわれた、悲惨な紛争のあったところである。
それがいまでは風光の明媚な観光地になり、わたしが部屋でテレビのまえに転がりながら、行きてえなあとつぶやく国になった。
じっさいあの紛争はひどかった。
毎日のように虐殺されたおびただしい死体の山が報じられる。
わたしはおぼえているけど、異なる民族の恋人同士が、ひとつの橋の上で手に手をとって死んだこともあった。
憎しみが憎しみを生み、その殺戮の連鎖はとどまるところがないように思えた。
それが、ある日、ぴたりと、じっさいにはNATO軍の空爆や、大国の干渉もあったけど、いまから考えるとぴたりというのがふさわしいくらいに、止んだ。
モンテネグロもクロアチアも、いまでは赤い瓦屋根が美しい観光国だ。
テレビで観るかぎり、人々はそんな殺し合いがあったことも知らないようだ(せいぜい20数年まえのことなのに)。
ユーゴ紛争はわたしたちにひとつの希望を与えてくれる。
戦争がぜんぜんあとを引かずにぴたりと止むことが可能なら、いまでも凄惨な殺し合いが続いている中東でも、やがてそれはゆっくりと沈静化し、現地の人々の平和な生活がもどり、わたしたちがピラミッドやペルセポリスのような古代の遺跡を、安全に見てまわる日が来るかもしれない。
それまでわたしは生きていられそうにないけど。
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