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2018年2月 7日 (水)

朝日年鑑

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田舎の親戚が入院したというので、見舞いのために帰省してきた。
親戚というのは、田舎ではそれなり名家だった農家で、子供のころのわたしにとって、わが家のつぎに想い出のある家である。
むかしの農家というのは部屋数も多く、開かずの間なんてのもあって、座敷わらしでも出そうといったらいいか。

そういう家だったから先祖代々の宝物が多かった。
当時としてはちょっとモダーンな離れの二階に日本刀があり、悪ガキだったわたしや従兄弟たちが、それを勝手に持ち出して、一階の屋根に張り出した篠竹をばっさりばさりと切り落としたこともある。
その日本刀は、その後研磨したり、拵えを白鞘に変えたりして、けっきょくは警察に届け出ちゃったようだ。

そんな家なので、離れの二階には古書、掛け軸のようなものもたくさんあった。
死んだわたしの母親の記憶によると、掛け軸の中に江戸時代の絵師、谷文晁の作品もあったという。
ただしご多分にもれず、日本中の農家をおそっている時代の変化と後継者不足で、かっての名家もいまは見る影もない。
わたしはしょっちゅう帰省するわけではないから、こうした宝物の現状について知るところがないのである。

入院した主人を見舞ったあと、 わたしの従兄弟にあたる家刀自が、本好きなわたしを見込んだのか、古い本があるんだけどねと言い出した。
マンガもあるよといわれてわたしは聞き耳をたてた。
鉄腕アトムの掲載された「少年」でもあれば、これはオークションでいい値がつきそう。
でも残念ながらそれは、この家の孫娘が愛読したマンガで、それほど古いものではなかった。

とりあえず古本の一部を見せてもらったけど、大部分は木箱の中に乱雑に押し込められていたせいで、表紙がはがれたり、湿気でページが貼りついたりと、とてもオークションに出せる状態じゃない。
その中でわたしがおもしろいと思ったのは、色刷りの地図がたくさん折り込まれた「満州国全図」という本。
文庫本ていどの小さな本だけど、わりあい状態もよかったし、これなら欲しいと思ったのは、あー、わたしだけか。

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もうひとつ、これは大判の「朝日年鑑」。
惜しいことに、出てきたのは1953年度版だけで、せめて10年分ぐらい揃っていれば価値があるんだけど。
わたしは歴史が好きだから、この年鑑をもらってきた。
1953年といえばわたしがまだ小学校にも上がってない年じゃないか。
その年にいったいどんな事件があっただろう。

1953年に発行された本であるけど、前書きを読むと、内容は1951年(昭和26年)の9月から翌年の9月まで、1年間の記録とある。
大判書籍に、眼鏡がないと読めないくらい小さな活字で、582ページもあるから内容はじつに細かい。
このころの人って眼がよかったんだなと思ってしまう。

この年鑑に出てくる事件で、目についたものを拾ってみると
米国ネヴァダ州で原爆実験、チャーチルとトルーマンが握手、高良とみが日本女性としてはじめて国際経済会議で発言、アルゼンチン大統領夫人のペロン死去、日本の社会党が分裂、破防法の可決とデモ激化、日航もく星号の三原山墜落事故、映画「羅生門」がヴェニス映画祭で大賞受賞、イソニコチン酸ヒドラジッドの販売が許可、白井義男が日本人最初の世界チャンピオン、ヘルシンキ・オリンピック開催など。
政治欄に警察予備隊の強化なんて記事があるから、まだ自衛隊は発足してなかったようだ(発足はこの翌年)。
東京都の人口はこのころまだ700万台で、全国の交通事故による死亡者数は7015人、床屋の値段が昭和8年を100とした場合、36倍になっていることもわかる。
そして、この大判の朝日年鑑が430円。

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添付した3枚目と4枚目の写真は、冒頭にあったおそまつなグラビア写真で、日比谷の血のメーデー事件と、きれいな女性はこの年に即位した現在のイギリスのエリザベス女王。
まだEUもなく、離脱だなんだという騒動もないころで、彼女も元気いっぱいだ。

ほじくればまだまだおもしろい事件があるかもしれないけど、いまは細かい文字を精査しているヒマがない。
なにか見つけたら、またおいおい書くことにする。

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コメント

僕の家は雑誌「平凡」をとっていたので「羅生門」の話題については知っていました。でも東宝の映画に関しては全く興味ありませんでした。今でもそうです。僕が最初に見た映画は「鞍馬天狗」です。嵐寛寿郎の鞍馬天狗と大河内伝次郎の近藤勇が刀を合わせる所で映画は終わって、幕が閉まりました。
蛇足:映画で最初に興奮したのは東千代乃介初主演の「雪之丞変化」の予告です。
補足:「羅生門」の配給会社は東宝だったと思うんですが、大映かも知れません。

投稿: 女音恋音 | 2018年2月 8日 (木) 10時23分

東宝か大映かはネットで調べるとすぐわかります。
わたしもリアルタイムで観たわけじゃないんですが、いやあ、京マチ子ってのはいい役者でしたよね。

投稿: 酔いどれ李白 | 2018年2月 8日 (木) 12時35分

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