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2018年7月 5日 (木)

ダイビング今昔

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タイのほうで洞窟に閉じ込められた少年たちが発見されたというニュース。
英国人のプロ・ダイバーが発見したそうだ。
このあとは少年たちを救出するために、洞窟内で臨時のダイビング・スクール開設ってことになるらしい。
今回はこのニュースに誘発されたわたしの思い出の小箱、いや、大箱を開いてみよう。
なんせわたしは年の功で、思い出だけはそのへんの若いモンに負けないくらいたくさん持っているのだ。

むかしわたしもダイビングに凝ったことがある。
子供のころから自然科学に興味があり、クストーの「沈黙の世界」なんて映画に胸をときめかせていたわたしのこと。
成人になってから多少はまともな企業に就職して、会社のなかにダイビングの愛好会があることを知るや、すぐに会員登録をしたことはいうまでもない。

しかし、もともとしろうとの有志が、見よう見まねで始めた愛好会だったから、技術なんかたかが知れていた。
いま考えるとずいぶんムチャをしたものだ。
そこへべつの方角から、もとプロの潜水士だったというWさんが加わった。
プロの潜水士というのは、水中での土木工事などにたずさわる人という意味で、まかり間違えれば命を落としかねない危険な職業に従事していた人のことである。

Wさんのエピソードにこんなものがある。
あるときわたしたちは7、8人で同時に海に潜ることになった。
そのころにはメンバーのほとんどが、あるていど経験を積んでいたけど、なかにひとりだけ、まったくダイビング初心者がいた。
ふつうは二人づつペアを組んで潜水するのが原則だったので、この新人はWさんと組むことになった。

ダイビング機材にレギュレーターというものがある。
これは空気ボンベとマウスピースを結ぶだけではなく、深度によって空気量を調節するという大切な役割をになっている。
深く潜れば潜るほど、必要な空気量がちがってくるので、空気の残量を確認するためのメーターがかならずついている。

潜り始めてまもなく、Wさんは相棒の残り空気量が異常に減っているのに気がついた。
ベテランなら呼吸の回数までコントロールできるようになるけど、初心者はどうしても回数が多くなり、そういうことはあるらしい。
こんなときは浮上してしまえばいいんだけど、それだと水面を泳いで港までもどらなければならない。
重いタンクを背負って泳ぐのは大変だ。

Wさんは相棒の手を引いて、潜ったまま一直線に港までもどった。
その晩の酒盛りでわたしは聞いてみた。
コンパスもないのによくまっすぐ帰れましたねと。
いまではコンパスはダイバーの必需品になっているだろうけど、当時はまだ高価だったので、わたしたち全員が持っているわけではなかったのである。
Wさんは平然と答えた。
海底の砂の模様を見たんだよと。
なるほど、砂には打ちよせる波の模様が、海底でもちゃんと刻まれているものである。

さて洞窟の少年たち。
救出するのにダイビングをマスターさせるらしい。
しかし両脇、もしくは前後をプロにはさまれて潜るなら、それほどむずかしいダイビングとも思えない。
しかもマウスピースでは不慮の事故もあり得るから、フルフェイス型のマスクを使うという。
これを国家の全面支援で行うというのだから、少年たちにとっては、遊園地でジェットコースターを体験するていどのものではないか。
年寄りが自分の金で潜ろうとするほうがよっぽどむずかしいので、おかげでわたしはそれっきりダイビングの夢を断たれているのである。

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