Stranger Than Paradise
「ストレンジャー・ザン・パラダイス」という映画を観た。
公開当時いくらか話題になったみたいだけど、「ラスト・ショー」や「ニュー・シネマ・パラダイス」みたいな映画が連想され、あまり観る気が起きなかったのである。
二級酒を水で薄めたような、どうにもやる気のない映画だった。
ストーリーは、ハンガリーから米国にやってきた若い娘が、いとこの若者の部屋に転がり込み、部屋のなかで意味のない会話をし、いとこの友人を含めた3人でフロリダへドライブするというもの。
出てくる男ふたりがどこにでもいそうな若者なのはいいけど、まあ、やる気のないこと。
もしかしたらゴダールの映画のように、男女の反社会的な行動や、放埓な三角関係を描いた映画かもしれないと思ったけど、べつに彼らが銀行強盗をするわけでも、桃色遊戯にふけるわけでもない。
いまどきの草食系男子ならともかく、なにかを期待するわたしの世代にはぜんぜんもの足りない。
そのまえには、テレビで「荒野の用心棒」をまた観たけど、用心棒が悪党の家に押し入り、拳銃で5、6人をあっという間になぎ倒す。
倒れた悪党の横を、飼われていた子犬がキャンキャン鳴きながら逃げていく。
映画の出来はともかく、細かいところに凝るものだと感心したものだ。
ところが「ストレンジャー・ザン」では、お金がかかってないことだけははっきりしていて、とにかくあるものだけで間に合わせたという感じ。
気の利いたセリフや、おもしろい仕掛けはまったくない。
でもこのやる気のなさに、どこかぬるま湯につかっているような心地よさを感じることも事実。
たぶん映画が制作された当時もいまも、これでもかこれでもかと、向こうから押しつけてくる映画が多すぎたせいだろう。
そしていちばん大きいのは、寝起きみたいな髪型で、終始口数のすくないこの娘の魅力かも。
べつにイヤらしい場面がなくても、ただ魅力的なヒロインを見ているだけで楽しいという映画も、たまにあるのだ。
最後に娘はハンガリーにもどることにする。
いとこは追いかけて飛行機に乗る。
帰国したと思った娘は、3人が寝泊まりしていたモーテルにぼんやりともどってくる。
それでどうなったのか。
べつにどうにもならなかったんじゃないか。
最近なにごとにも覇気のないわたしは、こういうのがユーモアであるという屁理屈をならべて、この映画を賞賛しようとは思わない。
| 固定リンク | 0
« ダイビングの続き | トップページ | 確率論 »
「壮絶の映画人生」カテゴリの記事
- ケイン号の叛乱(2024.04.28)
- 復讐の荒野(2023.12.10)
- エルマー・ガントリー(2022.09.24)
- 地獄の黙示録(2022.09.21)
- 観ました(2022.02.07)
コメント