悲しき高齢者
何者かがひしひしとわたしを包囲して、孤独へ孤独へと追いやっているような気がする。
おい、どっか旅行に行かないかと知り合いを誘ってみても、ここんところ百発百中で断られる。
これはなにかの陰謀ではないか。
そんなことを思いつめると、これは芥川龍之介の「歯車」みたいになってしまう。
これが昂じると、包丁を振りまわしたり、まっ裸で市内を走りまわることになり、オカルトにあと一歩だ。
すこし冷静にならなくちゃ。
考えてみると、わたしのトシで旅行にうつつを抜かしているほうがおかしいのだ。
このトシではみんな老後のことを考えて、貯蓄にはげむとか、浪費をひかえてみみっちく生きることに専念するのが当然で、わたしみたいなのはやっぱり異常なのだ。
ひとり旅の好きなわたしは、旅先でよく、やはりひとり旅の高齢者に出会う。
彼らもけっして孤独を愛している人ばかりではなく、若い彼女でもいれば、それといっしょに来ることを望んでいるに違いない。
しかし高齢者といっしょに行こうというのは、せいぜいくたびれた古女房か、あるいは神経痛に悩んでいる老人ホームのお仲間ていどで、できることならこっちからお断りしたい相手ばかりである。
だからわたしなんぞは幸運と思わなくちゃ。
わたしのトシで、いまもなお夢や希望を持ち続けていられるなんて。
欠点があるとしたら、夢の比重がますます増えていて、じっさいにお出かけする機会がどんどん減っていることだな。
今日なんか、葛西の水族館に「夜の魚たち」という企画を見に行こうと思ったら、激しい雷雨でとうとう行きそびれた。
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