伊良湖岬/フェリー
伊良湖岬に見るところが少ないことを知った旅行の幹事が、ある考えを提案した。
2日目はフェリーに乗って紀伊半島へ押し渡り、伊勢神宮に参拝して行こうという。
余計なことを思いつきやがってと、わたしはひそかに舌打ちをする。
じつは伊良湖岬に先立つこと数週間まえに、わたしが所属する団体の支部旅行があって、わたしも誘われたんだけど、目的地が伊勢神宮と聞いて、興味がないから行きませんとことわったばかりなのだ。
興味がないところへ、ひょんないきさつから連れていかれることになっちゃったわけ。
わたしみたいな無神論者がうっかり行って、祟られなけりゃいいが。
わたしは伊勢神宮に行ったことがある。
それはいまからもう20年ちかく前のことだ。
会社の同僚とふたりで、紀伊半島の先端にある串本へ行ってみようと、池袋から伊勢行きの高速バスに乗ったのである。
ところが伊勢に着いてみると、そこから串本まで予想以上に距離があって、同僚は路銀が足りないといいだした。
仕方がないですね、それじゃ目的地を変更しましょうということになり、わたしたちは志摩湾にある賢島というところへ行くことにした。
すると時間があまったので、そのときついでに伊勢神宮を見ていくことにしたのである。
なんだかすごくつまらなかったという記憶しかない。
しかしみんなが行くというのを止めるほど、わたしはヘソ曲がりじゃない。
いや、しょっちゅう会っている仲間ならそのくらいのことはいいかねないけど、たまにしか会わない連中にそんな文句をいっても仕方がない。
そういうわけで、2日目は朝からみんなで車ごとフェリーに乗り込んだ。
伊良湖岬から紀伊半島の伊勢志摩まで、地図を見てもらえばわかるけど、東京湾の久里浜〜木更津と同じていどの距離で、時間はおよそ50分。
このフェリーには階上に展望デッキつきの特別席があって、通常の料金に330円をプラスするとそちらに座ることができる。
メンバーのなかのいちばん若手が、先輩をさしおいて、ボクそっちに乗りますという。
わたしも負けずに展望デッキのチケットを買ったけど、せっかくの展望が、窓ガラスが汚れていて写真を撮るのに不都合なので、すぐに吹きっさらしの甲板に降りてしまった。
伊勢参りはともかく、フェリーに乗るのは楽しい。
わたしはかっての海上自衛官なので、船の上から海をながめていると、なつかしい思い出がよみがえってくる。
たまたま若手のひとりがそこにいたから、わたしはむかし海上自衛隊にいてね、よく艦橋見張りに立たされたもんさなどと話す。
春の暖かな日であれば、それはわたしにとって天国みたいな場所だったけど、あいにくこの日は、見張りに立つにはちょっと風の冷たすぎる日だった。
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