伊良湖岬/最近の傾向
この晩の部屋割りは喫煙者と非喫煙者でふたつに別れ、夕食をすませたあとの飲み会は喫煙者の部屋ですることになった。
喫煙者と呑んべえはたいていそれ以外の人間に迷惑をかけることになっているから、部屋を分けるのは当然のことだけど、それでわかったのはメンバーの中にタバコを吸わない人間が4人いること。
わたしもそのひとりで、わたしの肺は生まれたときのまま、ニコチンのニの字も知らないのである。
わたしがこの山登りクラブに熱心に参加していたのは過去の話で、もう20年近くもまえに職場が変わったから、最近では納会や飲み会に誘われたとき以外は、ほとんどメンバーとの交流がない。
今回の参加者のうち、古参メンバー2人はよく知っているけど、若手の4人については、わたしが職場を変わったあとに参加した者ばかりだから、その私生活についてはろくに知らない。
若手といっても、ひとりだけ20代後半がいるだけで、あとは40代ばかりだ。
若手のほうもわたしの私生活はよく知らないはずだから、飲んでいるときいってみた。
肩身がせまいねえ、この中に結婚してないのはわたしだけかい。
すると、えっ、先輩は独身なんですかとおどろきの声。
続いて若手全員が、わたしらもみんな独り者ですという。
そんなことはないだろう。
彼らのうちの、すくなくともひとりには奥さんがいることを知っていた。
逃げられたんだよと古参メンバーのひとりがいう。
やれやれ。
奥さんがいるはずの男がそんなありさまじゃ、若手の全員が独り者というのは本当かもしれない。
ことわっておくけど、彼らのなかにとくべつ容姿がわるいとか、どこか体に異常がある者はひとりもいない。
平均以上のイケメンもいるし、本人にその気があればふつうに結婚できないわけのない男ばかりだ。
世間の女はなにをしてるのかといいたくなってしまう。
これが最近の風潮というやつか。
この若手らは、いい相手がいれば結婚したくないわけでもないけど、そうでなければ積極的に結婚したくないという、最近の煮え切らない風潮に染まっているらしい。
いいトシこいて独身という男女が世間に増えているのは事実で、最近も3人家族のひとりが焼死という火災のニュースがあったけど、死んだのは両親といっしょに住んでいた40歳の息子だった。
いろいろ考えてみる。
若いうちならどうしたって若さゆえの衝動に負けて、女の魔手にからめとられるということも考えられる。
しかしうちの若手らはそこまで若くないし、すでに危険な年齢を通過している。
ずるずるだらだらと、彼らがわたしと同じ運命をたどるのはまちがいないんじゃないか。
そんな若手のひとりがわたしに、ロシアに行ってきたんですってねと聞く。
どうやらわたしは彼らの輝くヒーローになっているらしい。
わたしのことを、独身主義をつらぬいて、海外を飛び歩く、知的で活動的な男と思っているようだ。
ぜんぜんそんなことはないんだけど、わたしの存在が彼らを勇気づけているとしたら罪つくりな話だ。
日本の未来を案じつつ、酔っぱらったわたしは自分の部屋に帰ってさっさと寝た。
今回の記事は旅の報告だけど写真がない。
部屋で浴衣を着てだらしなく飲んでいる写真ならあるけど、そんなものを載せても仕様がない。
ということで写真は貼らないつもりだったけど、その後気が変わった。
ただしここに載せたのは昔の写真で、1998年の上高地・徳澤園。
まだまだメンバー全員が若かったころだけど、わたしはシャッター押し係なので、写っておりません。
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