美食の報酬
録画しておいた「刑事コロンボ」シリーズの 『美食の報酬』 という作品を見た。
これはある料理評論家が、高評価とひきかえにレストランから賄賂をもらっていたものが、レストランから逆に恐喝されて殺人を犯すというもので、殺人にフグの毒を使うというのがミソ。
ところが出てきたフグが、これ、どう見てもハリセンボン。
ハリセンボンに毒はないぞ。
そのくらい日本人なら知ってるはずだと、ググッてみたら、案の定この点を指摘する人が多かった。
ついでに映画のなかのハリセンボンはあまり生きがよくないなんて、余計なことを指摘する人も。
現在ならアメリカ人も寿司や刺身の味に目覚めてきたから、こういうドジはしなかったと思うけど、なんせコロンボ・シリーズはもう40年もまえの作品だからね。
そんなふうに善意で理解していたら、なんと映画のなかにフグ刺しを食べるシーン(ついでに日本の芸者まで)があらわれた。
ホントいじわるな映画だけど、これも謎解きのヒントになっているから、文句はいえない。
話は変わるけど、これを観て思ったのは、評論家というものは権威を持ちすぎるとロクなことをしない(場合がある)ということ。
むかしなんとかいう車の評論家が、誰でも知っているようなこと(わたしみたいにずっとカー・グラフィックを愛読していた人間には常識)をならべた本を書き、それが売れて有名になったということがあった。
すると彼はいっぱしの評論家みたいな顔をして、つまり彼がほめる車はいい車だというお墨付きを得たようなものだから、メーカーも彼にほめてもらいたい。
するとそこに馴れあいが生まれる。
そういうわけで、この評論家はそれをメシの種にしていたということがあった。
いまやネットでも食べものやレストランの評価が花盛りだ。
他人の評価ばかりをアテにしていると、往々にこういうことが起きるから、へそ曲がりといわれようとなんといわれようと、やっぱり自分の評価を大切にするべきである。
おまけ。
気のドクなハリセンボンについては、本来は南方系の魚という説明があるけど、関東地方でもけっしてめずらしい魚ではなく、江ノ島あたりでも提灯にされて売られているし、わたしは外房の勝浦で、港にこいつがたくさん打ち上げられているのを見たことがある。
沖縄ではアバサーといって、市場に出すほど貴重な魚ではないから、水揚げされるとたいてい近所の年寄りたちが、味噌汁のだしをとるために自宅に持って帰る。
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