« 治療方法 | トップページ | 年末 »

2018年12月27日 (木)

いちご白書

St04

わたしがジャンルにこだわらず、いろんな映画に興味があるという証明のために、わたしのライブラリーの中から、「いちご白書」 を取り出してみた。
これは1968年に起こった米国の大学紛争を扱った映画だけど、考えてみたら、この映画に登場する若者たちはわたしとほとんど同じ世代といっていい。
わたしは彼らと同時代を共有したわけだけど、それはいったいどんな時代だったのだろう。

1968年というと、米国の大学紛争が各国に飛び火し、日本も例外ではなかったころだ。
東大や日大で、ストだ団交だ内ゲバだと暴力が荒れ狂い、新宿駅では毎週のように投石デモが繰り広げられていた。
当時のわたしは東京に住み始めたばかりで、とある私塾の寮生だったから、幸か不幸か、そういう事件をリアルタイムで体験した。
友人のなかにも新宿駅へ石を投げに行って、機動隊にメガネをかち割られて帰ってきたのがいる。

ある日、わたしも新宿駅までデモの見物に行ってみた。
そのへんの路地から30人ほどの、ヘルメットにマスクのデモ隊があらわれると、周囲の大群衆から、いよっ、待ってました、ガンバレ!と声援が飛んで、ほんと、お祭り騒ぎ。
これっぽっちの人数じゃとても機動隊にかなわないと思ったけど、アホらしくなってとちゅうで帰ってきたから、彼らがその後どうなったのかわからない。
タノシイ時代だったよなあ。

ただわたしみたいな名門校でもないそのへんの私塾の学生からすると、大学生そのものが一種の特権階級に見えてしまい、学生デモに共感なんか感じられなかった。
しかもアメリカの学生ならベトナム戦争という、ヘタすりゃそのまま地獄行き、ヘタしなくても当時から格差というものは、いやおうなしに目に飛び込んできただろうから、校内でピケを張りたくなる気持ちも理解できるけど、日本の学生になに世間に文句をいう必要があるのか、まして革マルだ、中核だと激しいセクト争いをくりひろげるに至っては、わたしは完全に傍観者だった。

それから半世紀、そのころの騒ぎの結果はもう出た。
あの当時に大学生だった人たちは、死者さえ出した当時の混乱についてどう思っているのだろう。

St02

さて映画のハナシ。
見ているだけで楽しい女優さんがいると、たいていの映画は、それだけで最後まで観られてしまうという不真面目なわたし。
「いちご白書」 でわたしを惹きつけたのは、キム・ダービーという、むっちり肉体にあどけない顔がアンバランスな女優さん。
この映画の中ではミニスカートで登場し、パンチラがわたしのこころをときめかした、なんてことはどうでもいいか。

彼女は活動家であり、それにオルグされちゃうのがまじめなボート部の学生で、アメリカでも日本でも、体育会は保守的で右寄りという証明みたい。
彼は大学の学生寮にいるんだけど、部屋に女をひっばりこむえらい進歩的?な学生もいて、このへんは坪内逍遥の 「当世書生気質」 のころから、日本でも変わってないなあと思ってしまう。

St01_2

そんなことはべつにして、この映画がこの時代の空気をよく伝えていることも事実だ。
大学のなかにはアジ演説をする者、カルト宗教にかぶれたような学生もいて、まじめなんだかふざけているのかわからない。
こういう連中を一掃するために機動隊が導入される。
学生のほうはジョン・レノンの Give Peace a Chance なんか歌っちゃって、無抵抗主義。
そんな彼らに催涙ガス弾や警棒が容赦なくおそいかかる。
ラストシーンでの機動隊導入の混乱のなか、ストップモーションで静止した画面に、バフィ・セント=メリーの 「サークル・ゲーム」 がかぶさると、もうわたしって、いたずらに胸がじーんとしてしまうのよね。
あのころはわたしも人間が純粋だったって、しみじみ実感したワ。

| |

« 治療方法 | トップページ | 年末 »

壮絶の映画人生」カテゴリの記事

コメント

たびたび、失礼いたします。
また、懐かしくて、入力してます。
私もあの頃は劇場で映画を観まくっていた時期で、印象が深かったものが多く、この映画も同じくキム-ダービーにぞっこんでした。
彼女は今どうしているのでしょうね?
男優のブルース-ウィルソンも妙に印象に残ってます。「ウィラード」ご存じですか?
また、バフィセントメリーの名前もよく覚えていて、ラジオのリクエストで、よくかかっていました。
どうも思い出を、ありがとうございました。

投稿: みさまじんぐ | 2018年12月28日 (金) 10時06分

似たようなタイトルの西部劇があったような気がするけど、ウイラードって映画、わたしは観ていません。
調べてみたらネズミが登場するホラーのようで、公開が71年、はて、そのころわたしは何をしてたんだろ。
ダービーちゃんは4回結婚して、子供もいて、いまでも役者してるみたいですね。

投稿: 酔いどれ李白 | 2018年12月28日 (金) 16時29分

ありがとうございました。

投稿: みさまじんぐ | 2018年12月29日 (土) 07時05分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: いちご白書:

« 治療方法 | トップページ | 年末 »