フジ子・ヘミング
フジ子・ヘミングというピアニストがいる。
いまではちょっとした有名人だけど、かっての彼女は無名といってよかった。
戦前の生まれだから若い人ではないし、カタカナ名前でわかるように、世界をまたにかけて波乱万丈の人生を送ってきた人である。
しかし、少なくともわたしは、彼女のことを、名前すら聞いたことがなかった。
そんな彼女がフィーバーしたのは、20年ほどまえにNHKが彼女の特集番組を制作したのが大きいと、わたしは考えている。
たまたまわたしはこの番組を観た。
当時の彼女はうらぶれて、家族もおらず、貧乏アパートの仮住まいといった様子だったけど、この番組のおかげで世間から注目されるようになった。
その後のことはご存知のとおり。
といっても、現在の彼女がメジャーになったとはいいがたいけど、まあ、路頭に迷うことはなくなっただろう。
他人が幸せになるのを見るのはわるい気持ちではない。
昨日は吉祥寺まで出かけて、丸井のまえで版画展のポスターに気がついた。
ほかに用事がないときのわたしはこういうものに目がないのだ。
ちょいとのぞいて作品をながめているうち、作者名がフジ子・ヘミングになっている版画がいくつかあるのに気がついた。
これはあれといいかけると、係員が、ええ、ピアニストのヘミングさんですという。
へえー、彼女は絵も描くのかとわたし。
リトグラフによる版画だけど、絵柄はユニークでおもしろい。
最近はこんなマルチ芸術家が多いようだ。
わたしの知り合いで熊本に住んでいるKさんは、笛作りが本職だけど、もちろん笛も吹くし、絵は描くし、釣りはするし、いずれも玄人はだしの腕前だ。
幼なじみのカトー君は教師上がりの版画家だけど、ときどき近所の人を集めてコンサートなんかやっている。
無芸大食なのはわたしだけみたい(恥ずかしいから食事だけは小食にしてるんだけどね)。
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