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2019年2月 5日 (火)

悲愴

わたしはクラシック音楽も聴くけど、どっちかというと協奏曲が多くて、フルオーケストラによる交響曲が苦手である。
若いころに、なんでも聴いてみようという意欲で、古今の大作曲家の交響曲をかたっぱしから聴いてみたことがある。
あまり楽しくなかったねえ。
ベートーベンやマーラーなんかいまでも聴く気がしない。

でも思うんだけど、どんな音楽でもひとくくりにして、それはキライとか好きとかいうのは間違っている。
探せばどんな音楽の中にも、きっと気にいるものがあるものだ。
これは逆の意味でもいえる。
おれはジャズが好きだという人でも、ジャズならなんでもいいわけじゃあるまい。

だから苦手なクラシック(の交響曲)の中にも、わたしの好きな曲はある。
だれそれの交響曲◯◯番なんて無味乾燥なタイトルを並べてもピンと来ないので、バッハ、シベリウス、シューベルト、ベルリオーズ、ドヴォルザークなどの、世間にもよく知られた交響曲の中には好きなものがあるとだけいっておこう。

ここにひとつ、チャイコフスキーの「悲愴」という交響曲がある。
20代の後半のころ、人生になんの希望も持てずボロ・アパートでくすぶっていたころ、わたしは初めてこの曲を聴いた。
感動したとか、励まされたとか、人生が変わったなんてオーバーな表現はつつしむにしても、この曲はわたしの脳髄に響いた。
とくに第2楽章の、もういやなんだよう、もういやなんだようというセリフを反復しているように聴こえる箇所で、わたしはなみだをポロポロ流した。
なにがいやだって、当時のわたしは生きるのがイヤでイヤで仕方なかったのだ。

どん底にある若いもんがこんな曲を聴くことが、いいことかどうか知らない。
でもわたしはもう充分だといえる歳まで生きながらえた。
いまでもときおりこの曲を聴くことがあるけど、自分が越えてきた山河を思って、胸がしめつけられるような気分になってしまう。

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