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2019年3月18日 (月)

バレエ/黄金時代

2月18日に「白鳥の湖」と抱き合わせで放映されたのが、ボリショイ・バレエの「黄金時代」。
こんなバレエは聞いたこともなかったので、あまり期待もしないで観たけど、これは、むしろ「白鳥」よりも、いろんな点でおもしろかった。

一見したところ、お姫様や悪魔や人形使いが出てくるような古典バレエではないし、登場人物の服装からすると現代バレエのようである。
しかし音楽の作曲はロシアのショスタコーヴィチで、初演は1930年というから、現代バレエともいいにくい。
ストーリーはいちおうあるらしいけど、音楽と踊り優先で、解説がなかったらどういう話なのかさっぱりわからない。
ボリショイ・バレエだから、とうぜんロシアのバレエなんだろうけど、物語の背景がどこなのかわからないのである。

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冒頭に旗をふる大勢の男女が出てくる。
これはまあ、革命が成就した直後で、まだ共産主義に一点の疑念も持たれていなかったころの、コルホーズの健全な労働者たちみたいだから、いかにもロシアらしい。
しかしこのあと、キャバレーで男女のダンサーが踊るシーンがあるんだけど、女の子たちのファッションは禁酒法時代のフラッパーガールそのものだから、はてね、ロシアにもそんな時代があったっけと悩む。
アメリカでギャングが殺し合いをしていたころ、ロシアではレーニンやスターリンが、政敵や民衆を盛大に殺しまくっていたんではなかったっけ。

いろいろググッてみた。
ショスタコーヴィチがこれを作曲したころ、彼は西洋的モダニズムに影響されていたなどとムズカシイことが書いてある。
国籍不明のバレエになったのはそのせいかもしれない。
そういえば背景に絵看板を立てただけみたいな舞台美術は、絵がらがロシア・アバンギャルドふうといえなくもない。

あらすじをひとことでいうと、健全なロシアの労働者とその恋人、これにギャングと情婦がからむ物語らしい。
初演時のこのバレエは、資本主義はギャングに汚染されているという、もっと当局のプロパガンダ的性格の強いものだったらしいけど、80年代になって復活再演され、そのときから現在のかたちになったという。
そんなことをいわれても、戦後世代が初演時のこのバレエを観るのは(映像が YouTube にでもアップされてないかぎり)不可能だから、わたしがゴタクをいうのは今回録画したものについてだけである。

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時代背景はともかく、最初のキャバレーの場面は圧巻だ(キャバレー場面はあとでまた出てくる)。
女性として完璧なプロポーションのダンサーたちが、軽やかなリズムの音楽にのって飛んだり跳ねたり、まるでジーン・ケリーやシド・チャリシーの出演していた、最盛期のMGMミュージカルを観ているよう。
きっちりお化粧をした男性ダンサーは、宝塚歌劇みたいでもある。
これじゃわたしのバレエへの先入観を打破するようなバレエではないか。

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主演はニーナ・カプツォーワといって、容姿といい、スタイルといい、踊りといい、一点の非の打ちどころもない完璧なバレリーナだ。
そんな彼女がこのバレエでは、男のダンサーから持ち上げられて、サーカス顔負けのアクロバット的演技をみせる。
男?
男のダンサーにはあまり興味がないんだけど、これは大変な仕事だなと思う。
バレエ用語でリフトというものがあり、これは男性が女性を空中に放り投げ、また受け止めるものらしいけど、見ていて危険な荒技という感じがする。
まちがえて彼女を床に落としたら、ヘタをすると首の骨を折るぞ。
じっさいに大怪我をした有名バレリーナもいるそうだ。

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この舞台には準ヒロインとして、エカテリーナ・クリサノワという、愛嬌のある顔をしたバレリーナが出てきた(上の写真)。
彼女を見て、どこかで見た顔だなと思い、よく考えたら、戦前のアメコミに登場するベティ・ブープみたいではないか。
時代設定が禁酒法時代だから、意識してその時代のマンガの主人公に似せたのか、たまたま偶然なのか、責任者に聞いてみたい。
彼女の踊りが好き。

ほかにも、あれ、この人は「コッペリア」で人形作りのおじいさんをやっていた人じゃないかという、背のたかい男性ダンサーも出ていた。
両方ともボリショイ・バレエだから、同じダンサーが出演していてもおかしくない。
それじゃあとラストクレジットを眺めてみたら、「コッペリア」で主役だったマルガリータ・シュライネルちゃんもわき役で出ていたようだ。

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とにかくこれは楽しいバレエである。
復活再演されたあとは、プロパガンダはあとかたもなく消えて、上記のMGMミュージカルや、宝塚歌劇や、パリのクレイジーホース、フェリー二の映画、ライザ・ミネリの「キャバレー」などをかたっぱしから連想させる、ショーマンシップいっぱいのバレエになった。
じっさいの舞台を観てみたい。

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