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2019年3月28日 (木)

また「くるみ割り」

世間に訴えたいこと、生きているうちに書いておきたいことがたくさんあると書いたばかり。
どうもブログがこちらの思い通りにならないのがシャクの種だけど、終活中のわたしには時間がない。
またいちゃもん居士のゴタクを始めよう。

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わたしは気に入ったテレビ番組や映画などがあると、むかしならDVD、最近ならブルーレイに焼いて保存しておくくせがある。
こういうマニアはめずらしくないから、世間には集めたコレクションに埋もれて、ひとりでうけに入っているコレクターも少なくないと思われる。
ただ、そういうディスクが何百枚にもなると、きちんと管理しておかないことには、どこにどんな番組があったか忘れてしまい、ついうっかり、以前録画した番組をもういちど録画・保存してしまったりする。
そうしたミスを防ぐために、わたしの場合、パソコンでデータベースを作って、過去に保存したディスクをいつでも、すばやく検索できるようにしてある。

前置きが長くなったけど、たまたま過去に保存したテレビ番組についてDBを調べていたら、パリ・オペラ座のバレエ「くるみ割り人形」が出てきた。
これは古典を現代ふうにアレンジしたバレエで、登場人物の服装はちょっとレトロであるものの、いまの男女が街中で着ているものとほとんど変わらない。
そんなバレエがおもしろいのかといわれると、じつは冒頭の部分をちらりと観て、あまりおもしろくないと思った。
おもしろくないものをなんで保存したのかと聞かれると、いまみたいにバレエにはまり込むまえに、なんかの参考になるかと、べつの番組を保存したディスクの、あまった部分に押し込んでおいたものなのである。

しかしいまのわたしはいっぱしのバレエ評論家だ(そのつもりなのだ)。
以前に書いたチューリッヒ版の「くるみ割り人形」と比較してみたら、これはおもしろそう。
というわけで、あらためて鑑賞してみた。

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なんだかよくわからない。
くるみ割り人形のストーリーは、人形の王子様にいざなわれた女の子が、ファンタジーの世界でネズミたちと闘う話だと思っていた。
チューリッヒ版ではそのとおり、登場人物は、人形にしてもネズミにしても、だれが見たってそのとおりの格好で出てくる。
ところがオペラ座版では、ネズミなんて最後まで1匹も出てこない。
つまり、これはレンブラントの絵をピカソが描き直したような、飛躍解釈したバレエらしいのだ。

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オペラ座版の主役は、マリオン・バルボーというスリムなカワイ子ちゃんで、バレリーナというのはスリムに見えても、足のあいだから向こうが見えるようなガリガリはいないから、彼女もなかなか魅力的である。

幕あきはヒロインの誕生日パーティから始まる。
大勢の男女が屋内でプレゼントを差し出したり、椅子とりゲームで悪ふざけをしたりしている。
男のグループと女のグループが二手に分かれて、“通りゃんせ” のような遊びをする場面があり、これなんか映画「ウエストサイド物語」みたいである。
そういえば「ウエストサイド」は、もともと舞台で演じられたブロードウェイのミュージカルだ。
ミュージカルとバレエってどこが違うのさ。
この「くるみ割り」では、ヒロインは洋装にハイヒール姿で、いちどもトゥシューズをはかないから、このままミュージカルといわれてもわからない。

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あまりおもしろくないと思ったのは、この意味不明なパーティ場面のせいだ。
つぎの場面になると、舞台はCG映像と組み合わさった、三途の川の岸辺みたいなところになり、ヒロインは不気味な亡者たちにかこまれてしまう。
さらには怪奇な幻獣たちの跋扈する森の中になり、これは映画「アバター」みたいである。

ヒロインは床に横たわり、体をもだえさせ、スカートをたくし上げたり、男を誘うように股をひろげたりする。
服をつけたままだけど、むしろそれだからこそ、わたしみたいな想像力旺盛な人間にはたまらなく刺激的。
わたしが官能的という言葉を使ったら、それはイヤラシイと同義語と思ってかまわないけど、このバレエはおとぎ話とはかけ離れた、官能的なおとな向けバレエになってしまうのだ。
いったいどこを見てるんだといわれそうだけど、踊りがそもそもそういう踊りだし、振付け師の意図もそういうものだろう。
いくら仕事とはいえ、ウンコ座りまでさせられるバレリーナも大変である。

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とつぜんゆるキャラみたいな等身大の人形にかこまれる場面がある。
ヒロインの分身みたいな娘がたくさん現れて、このへんはL・キャロルのアリスの続編である「鏡の国のアリス」みたいだ。
その娘たちがみんな官能的なポーズをとるから、いくら “官能” の好きなわたしでも、これはいったいバレエなのかと叫びたくなってしまう。
もちろんバレエです、古典を現代的に解釈したバレエなのですと返事が返ってきそうだけど、わたしが前衛や抽象がキライということを知らないな。
他人がどんなバレエを好きになろうとかまわないけど、わたしはこのバレエがいいとは思わない。

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日本のアニメの影響じゃないだろうけど、最後は巨大隕石が地球に衝突するという、新海誠の「君の名は」みたいな結末で、なんだなんだ、ヒロインはどうなったんだといいたくなってしまう。
最近は子供向けの夢のあるバレエや、へんに細工をしない官能的な大人のバレエは流行らないのだろうか。
そういえばフィギュアスケートで、エリザベータ・トゥクタミシェワというロシア選手が、ストリップまがいのスケートをしたこともあるな。
彼女が氷上で上着を脱ぎ捨てると、観衆からうわーっというどよめきが起こった。
考えることはみんないっしょじゃん。
そのくらいしないと最近の客は満足しないのか。
おかげで演技がますます過激にエスカレートするとしたら、それに文句をいうほどわたしは野暮天じゃないけど、やっぱりバレエにはあまりとんがって欲しくない。

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