バレエ/シルヴィア
バレエにもミス・キャストというのがあるようで、たとえばこのあいだ録画した「シルヴィア」というバレエ。
これはギリシア神話を題材にしたウィーン国立バレエ団の舞台で、わたしの好きな古典バレエらしいから期待して観たんだけどね。
ストーリーは羊飼いの若者と妖精の恋物語、という古典バレエにありがちなもので、ヒロインの妖精というのは月の女神ダイアナに仕える妖精ということになっていた。
でも月の女神もそれに仕える妖精たちも、みんな手に弓を持っているから、ダイアナはギリシア神話のなかの、狩猟の神でもあるアルテミスと同一神といっていいだろう。
彼女はコワイ神さまで、このバレエにも登場する狩人のオリオンが、天上の星にされたのも彼女の怒りにふれたせいだ。
わたしはギリシア神話にも傾注したことがあるから、こういうことはよく知っているのだ。
という余計なことはさておいて
主役の女の子はニキーシャ・フォゴといって、まだ去年の11月、この舞台終了とともにプリマに昇格したダンサーらしい。
1995年生まれというから、年期の必要なプリマ・バレリーナとしては若いほうだろう。
カーテンコールのさいのはしゃぎぶりからすると、まだまだミーハーの女の子みたいである。
彼女がミス・キャストだなんていうと、若い娘のことだし、傷ついてしまうかもしれないから、たくさんいる妖精のなかにはアフリカ系がいてもおかしくないとだけいっておこう。
そして、たまたま脇役で出ていたナターシャ・マイヤーって子が魅力的すぎて、どうしてもそっちに気をとられたぐらいにいっておく。
ここに載せたのは、左が今回の主役のフォゴさんで、右がマイヤーさんだ。
このバレエでは、月の女神と猟師のオリオン、ニジンスキーの再来みたいな牧神と、マイヤーさん扮する美しい妖精など、まあ、ほとんどのダンサーは適役なんだけど、ふたりばかり(わたしが見ると)役柄にふさわしくないダンサーが混じっていた。
ヒロインの恋人である羊飼い(すぐ上の写真)は、ヌーボーとした若者で、あまりモテそうでない。
春先に大学のキャンパス内を歩くと、ひとりやふたりはこういう顔をした若者に出会うものだ。
最悪のミス・キャストは、愛の神エロスを演じていた、風呂屋の三助みたいなダンサー。
エロスというのは別名キューピッドのことで、その手にした弓で射られると、だれでも目のまえの異性を好きにならずにはいられないという、いたずら好きな神さまのことだ。
絵画などではふつう、裸のかわいらしい男の子として描かれることが多い。
それがどうだ。
ひげそり跡も生々しい、胸毛もじゃもじゃのごっついおっさんで、それが小学生の学芸会のように、背中にちゃらちゃらと羽根をつけてあらわれるのだ。
わたしは彼を見て軽いショックを受けた。
ま、バレエ団にもいろいろ都合があって、団員にまわり持ちで役をあてがわなければいけない場合もあるのだろう。
たまたまテレビ放映された舞台の役者が、ミス・キャストだったとあきらめるしかない。
でもやっぱり、わたし的にはナターシャ・マイヤーさんの「シルヴィア」が観たかったねえ。
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