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2019年5月 1日 (水)

孀婦岩

Sofu

太平洋のまん中に孀婦岩という島が屹立している。
孀婦(未亡人)という名前は、聖書に描かれたソドムとゴモラの崩壊のとき、うしろをふりかえって石になったロトの妻がモデルだそうだけど、遠方から見ると、僧衣をまとったお坊さんがたったひとりで佇んでいるような異様な姿である。
場所は伊豆七島の八丈島と小笠原の中間あたりで、ただこの航路からいくらかはずれているために、むかし小笠原へ行くために連絡船に乗っていたわたしが、いくら目をこらしても見えなかった。

わたしがはじめてこの島のことを知ったのは、生前の団伊玖磨さんが八丈島に仕事部屋を持っていたころのことである。
そのころ、この人の「八丈多与里」という随筆がラジオ放送されていて、わたしも仕事のあい間によく聴いたものだった。
パッションフルーツという果物の名前をはじめて聞いたのもこの放送からである。

この随筆は本にもなっていて、それにたしかこの島の探訪記も出ていたと思う。
知り合いの釣り師や潜水士を伴った、一種の博物記のような本だから、そっち方面に興味のあるわたしは熱心に読んだ。
島のまわりの海はマグロやカツオのような大型回遊魚の宝庫で、取材チームのひとりが海に飛び込んで、海流の速さに溺れかかったなんてエピソードが興味深かった。

ただ、もちろんわたしのような無名人が、この島をじっさいに見に行けるわけもない。
いいかげん忘れかかっていたころ、最近NHKの番組でこの島の実態がくわしく報告された。
太平洋上に孤立した島だから、固有の進化した昆虫などがいて、研究するにはおもしろそうだけど、平地やビーチのまったくない島だから、水着のお姉さんが訪れることは、将来にわたってあり得ないと思われる。
不思議なかたちの島は、何千年、何万年かあとには、また砂漠の遺跡のように地上からすがたを消すのだろう。
むなしく天をさすこの島を見ていると、ほんのわずかな時間しか生存しない人間と、悠久の歴史をもつ大自然をつい比較してしまう。

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