松方コレクション
本を読みながら風呂に入るつもりで、一瞬うろたえた。
部屋にあった本のほとんどを、終活中ということで可燃ゴミに出してしまったから、読む本がない。
仕方がないから、風呂場で読むにはふさわしくない大きめの美術書、朝日新聞出版の「世界名画の旅」というのをかかえて入浴する。
この本はありきたりの美術批評ではなく、古今の絵画にまつわる裏話や、おもしろいエピソードを取り上げたもので、1巻から5巻まである。
それが全部そろっているから、古本屋に持っていけばいい値がつくんじゃないかと、いままでゴミとして処分してなかったものである。
たまたま風呂場に持ち込んだのはその4巻で、そのなかに松方コレクションにふれた文章があった。
松方コレクションというのは、本物の欧米の絵画を日本人に知らしめようと、私財を投げ打ってゴッホやゴーギャン、モネなどを収集した造船王松方幸次郎の絵画コレクションのことである。
このコレクションが、やがては上野の国立西洋美術館設立につながっていくというから、むかしの金持ちはスケールが大きかった。
もっとも金持ちというのは一攫千金のバクチみたいなところがあって、彼によって収集された絵画は、その後造船業界の経営危機や、大戦の影響などで多くの災難に見舞われることになる。
しかしそれは松方本人に責任があるわけじゃない。
現在、たまたま西洋美術館で「松方コレクション展」をしているから、ひとつ出かけてみるか。
オレは絵のことなどわからないと豪語していた、いかにも日本的なこの資産家の偉業を偲びつつ。
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