かっての仲間
むかし働いていた会社の同僚から電話がかかってきて、当時の仲間を集めて飲み会をしたいから、幹事をやってくれという。
わたしの同僚というと、もうほとんどがリタイヤして、わたしと同じように他人とのつきあいも疎遠になっているのが多いから、人間ギライではひけをとらないわたしにお鉢がまわってきたらしい。
あまり気がすすまないものの、いちおう引き受けて、かっての同僚たちのいくたりかに電話をしてみた。
このトシで無病息災なのはわたしぐらいだけど、くたびれたおじさんばかりのなかに、ひとり気になる男がいた。
1年ほどまえに奥さんを亡くした男で、完全に打ちのめされて、ずっと家にひきこもっているという。
気晴らしになるかもしれないから、たまには出てきたらどうだいといってみた。
とても出かけようという気にならないよと死人のような声。
なんなら送迎してやってもいいよといってみた。
それでもダメだった。
死ぬ気なら、死ぬのはいつでもできるじゃないかとまでいってみた。
やっぱりダメだった。
家に押しかけてライフルかなんかで脅かしでもしないかぎり、とうてい出てくる可能性はなさそうだ。
うーんと考えてしまう。
それほどまでに奥さんを愛していたのなら、わたしにはほかに打つ手がないし、わたしのようにずっとひとりで生きてきた人間には、及びもつかない事情があるのだろう。
そもそも他人の心配をするまえに、わたしは自分のことを心配しなくちゃいけないのだ。
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