ジンジャー・ベイカー
新聞にロック・グループ「クリーム」のドラマーだったジンジャー・ベイカーの訃報。
終活中のわたしが生涯に出会った最高の音楽を選ぶとしたら、かならず3本指に挙げなければいけないバンドのメンバーだった。
はじめて彼らの音楽を聴いたのは、彼らの2枚組アルバム「Wheels of Fire」が発売された直後だったけど、当時から貧乏人だった小生には、内容のわからない2枚組というのは、清水の舞台から飛び降りるような勇気のいる買い物だった。
ビートルズやストーンズの曲なら、テレビやラジオで聴く機会が多かったのに、なぜかクリームに関しては、ほとんどその機会がなかったのだ。
原因は彼らの演奏が、ちょいと聴くには長すぎるライブ演奏に特徴があったせいだ。
2枚組のなかの『スプーンフル』を聴いたときの衝撃は忘れることができないけど、この曲は1曲で17分もあるのである。
曲が長いせいで、ヘッドホンで集中して聴いていると、自分のバイオリズムがしだいに曲と合致して、LSDによる陶酔を体験しているような気分になってしまう。
同じような体験のできるミュージックはないものかと、それからわたしの現在まで続く長い音楽行脚が始まったのである。
ジミ・ヘンドリックスと出会うのもその行脚の途中だから、クリームの影響の大きさは計り知れない。
ここに載せたのはサイケデリック・アート全盛のころの彼らのアルバムで、右が2枚組の「Wheels of Fire」。
ジンジャー・ベイカーというと、当時から年齢不詳のおじいさん顔だったけど、享年は80だそうだ。
2枚組アルバムのなかでは彼の長いドラム・ソロも聴けるものの、それより他のふたつの楽器(ギターとベース)と共演したときの、リズム・セクションに安住しないドラムがすさまじい。
クリームの3人のメンバーのうち、すでに2人が亡くなって、このグループも再結成が永遠に不可能になった。
わたしはあらためて自分の人生の幸運を思う。
これがわたしの彼に対する追悼の辞だ。
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