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2019年11月26日 (火)

魔笛

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ひさしぶりにテレビで観た舞台のお話だ。
オペラはあまり好きじゃないんだけど、すこしまえに放映されたグラインドボーン音楽祭における「魔笛」というオペラがおもしろかった。

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「魔笛」というのはモーツァルトの有名な古典オペラであることぐらいは知っている。
本来ならロビン・フッドの時代の劇なんだろうけど、この音楽祭のそれは思い切りアレンジがされて、登場人物の服装からするとビクトリア朝、つまりシャーロック・ホームズの時代を思わせる劇になっていた。

最近になってオペラやバレエの収集を始めたわたしには、時代を改変した古典オペラはけっしてめずらしくない。
わたしが録画したものだけでも、「スペードの女王」、「マクベス」、「アッティラ」、「タンホイザー」など、古典のままのオペラを探すほうがむずかしいくらいだ。

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オペラの場合、登場する役者には声量が必要だから、ヒロインは太った女性であることが多く、これがわたしにオペラがピンとこない理由だった。
しかし「魔笛」はもともと喜劇だから、ヒロインを演じたソフィア・フォミナさんが太った女性であっても、滑稽味を増すためのデフォルメとみなすこともできる。
彼女はなかなかの美人だし、こうなると太った女性は、もうそこにいるだけで温かな微笑みを感じさせるものなのだ。

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ヒロインはさておいて、この「魔笛」でいちばん感心したのが、音楽よりも舞台美術である。
セットは書き割りみたいな感じだけど、どこかで見たようなイラスト風の絵で、誇張された登場人物に、ユーモラスな造形のヘビや、大きなロボットまで出てくるのだ。
夜の女王のしもべである三人のウエイトレスが、「女性に参政権を」というプラカードを持っていたり、魔法使いのようなカギ鼻のおばあさんが、歳を訊かれて18歳と2分だと答えたり、皮肉やナンセンスの要素もありあり。

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わたしはこの「魔笛」を観て、ふいに宮沢賢治の童話を連想した。
突拍子もないことかもしれないけど、同じような舞台美術で、賢治の「注文の多い料理店」や「銀河鉄道の夜」をやったらおもしろいと思ったのである。
賢治には「飢餓陣営」や「植物医師」のような戯曲作品もあり、教師をつとめた学校では劇の指導にも熱心だった人だったから、彼がこのオペラを観たら、なんらかのインスピレーションを受けていたかもしれない。
歌唱方法のレベルが高すぎるのが欠点だけど、これをもうすこしとっつきやすいものにしてくれれば、この「魔笛」はそのまま子供向けの楽しいミュージカルになりそうだ。

もちろん音楽もすばらしいと書こうと思ったけど、よく考えたら舞台美術や出演者のコミカルな演技にばかり目がいって、音楽のほうはぜんぜん記憶に残ってなかった。

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