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2019年12月31日 (火)

大晦日に寄す

0894

今年は仕事をやめた記念すべき年だけど、それもいよいよあと数時間ということになった。
ちょっと不思議な気がしないでもない。
わたしがいまのアパートに越してきてから20年あまりになるけど、もう半年もすればまわりの景色は一変しているだろう。
越してきたころはすぐとなりが、東京ではめずらしい専業農家で、アパートのまわりはまるで信州の片田舎のように自然に恵まれたところだった。
陽をさえぎるものといったら、庭にそびえる大きなケヤキの木だけ。
この木のこずえにはカラスが巣をつくり、春になると子育てをしているのが部屋から観察できた。
農家のおじさんがそれをイヤがり、木に登って巣を叩き落とすという、そんな民話みたいな光景も見られたくらいだ。

このアパートはわたしみたいな自称ナチュラリストにとって、まことに恵まれた住まいだったのである。
ところが2年半まえに農家のおじさんが亡くなって、家が(細かい事情は知らないけど)さっぱりと撤去され、今年いよいよ住宅建設が始まった。
すでに区画割は済んでいて、それによるとわたしの部屋のハナっ先3メートルのところまで、新しい住宅が迫りそうである。
迫るのが女子大の寮でもあれば文句はいわないが、これではおちおち昼寝もできない。
新しい家の住人だって、すぐ目のまえのベランダで、わたしみたいなおじさんがパンツを干していたら落ちつかないだろう。

つまりわたしの幸福な生活は終わりを告げたのだ。
たぶんわたしは来年のしかるべき時期に、新しい住まいに引っ越すことになるだろう。
ちょうど住宅建設が始まるこの年に、たまたま仕事をやめることになったのもなにかの縁かもしれない。
バラ色の未来が待っているような気はぜんぜんしないけど、わたしはこの部屋で見た四季おりおりの風物をけっして忘れない。

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