アラバマ・ソング
昨夜のBSプレミアムシアターは「マホゴニー市の興亡」というオペラ。
録画するべきかどうか迷ったので、放映まえにいささか調べてみた。
なんでも娼婦やアル中が入り乱れる、まるっきり現代アメリカみたいな架空の都市を舞台にしたオペラだそうだ。
アメリカが舞台の古典オペラというだけでめずらしいけど、ソドムの市みたいに堕落した人間たちを描いたものらしいので、ある種の期待をいだいて早送りで観た。
なんで早送りかというと、ある種の期待の部分をとりあえず確認したかったから。
たまげたのは出てくる女に美人がいないこと。
男の裸が二ヶ所くらい出てきたけど、いずれも肉のたるんだおっさんであったこと。
そういう登場人物に、カメラをかかえたテレビクルーまで右往左往して、もうなにがなんだかわからないコンテンポラリー・オペラの一種。
あまりのおぞましさに視聴を放棄しようかと思ったけど、じつはもうひとつ確認したいことがあったのだ。
すでに団塊の世代にとって伝説になってしまったロック・グループのドアーズ。
早世したジム・モリソンのことを思うといまでも無念に思うけど、いや、おかげで彼はわたしのこころのうちで神格化されたから、それでもいいかなと思うけど、彼の歌に「アラバマ・ソング」というものがある。
月夜の晩にお月さんを見上げながら独唱すると、なかなかいい調子の歌なので、わたしはカリマンタンに行ったとき、夜のボートの中でひとり口ずさんだことがある。
これってじつはドアーズの歌ではなく、クルト・ワイルというオペラ畑の有名な作曲家が作曲したものだ。
どんな歌か、いちいちオペラを通さずに聴きたければ、ロッテ・レーニヤが歌っている単独のこの歌が YouTube で聴ける(もちろんドアーズの歌も)。
レーニヤさんはクルト・ワイルの奥さんだった人で、どんな顔をしてるかというと、「007ロシアより愛をこめて」の、靴に匕首をしのばせたコワイおばさんだ。
うん、わたしの知識はとどまるところを知らないな。
「マホゴニー市」こそ、オリジナルのこの「アラバマ・ソング」がうたわれるオペラなのだ。
このオペラとドアーズの歌ではだいぶ雰囲気がちがうけど、おかげでひさしぶりにジム・モリソンを思い出したのはよかった。
あとから追記/正直いってドアーズの歌をじかに聴いたのでは、意味がよくわからなかったけど、アラバマ・ソングは新開地に集結した娼婦たちが、新たに商売を始める場面でうたわれる歌だった。
どおりで女たちが卑猥ですさんだ風体なのも納得。
反体制を売り物にし、反社会的行動をいとわなかったドアーズが、この歌を取り上げたのも当然かもしれない。
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