童話ひとつ
太郎くんが田んぼのあぜを歩いていると、ヘビがカエルを飲みこんでいるところに出くわしました。
カエルはか細い声をあげて必死に草にしがみついていましたが、もうすでに下半身はヘビのお腹のなかです。
かわいそうに、こんなやつでも命をもった生きものなのだ。
助けてやろう。
そう考えた太郎くんは、近くにあった棒でヘビの頭を叩きました。
ヘビはたまらずカエルを吐き出してどこかへ逃げてしまいました。
その晩、太郎くんの枕もとに美しい女性が立ちました。
太郎さん、わたしはカエルの化身です。
今日は命を助けていただいて、どうもありがとうございました。
お礼にあなたに百万円をさし上げましょう。
そういって女性はかき消すようにいなくなりました。
女性がいたあたりに、ほんとうに百万円の札束が残されておりました。
やれ、うれしや。
このお金で海外旅行でもするか。
そんなことを空想している太郎くんの枕もとに、やせぎすの男が立ちました。
ばかやろう。
おれはヘビの化身だ。
おれの仕事はカエルを食うことだ。
邪魔をしやがって。
こういうと、男は棒で太郎くんの頭を叩き、百万円を持ってこつぜんとすがたを消してしまいました(とさ)。
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