悪ふざけ
新しい部屋に引っ越して1カ月以上がすぎた。
建物がボロで、部屋がせまいのはどうしようもないけど、わたしはそういうことにあまり文句をいわないタチだ。
ひとり者のわたしには、部屋の広さよりも、そこがいかに充実した部屋であるかのほうが問題なのだ。
旅行に行っても、WI-FIがあればほかに必要なものもないので、バストイレに、ベッドひとつでいっぱいのビジネスホテルで満足してしまう。
だから新しい部屋は天国だ。
新しい住まいは集合住宅の1室で、まわりに新しい1戸建ての住宅も建っている。
そういう家に住んでいる人をうらやましいとは、本気で、まったく思わない。
部屋に入ってしまえば、わたしの部屋も十分に充実したところだし、亭主にがみがみいう女房や、生意気をいう子供たちもいないのだ。
買い物に行くために自転車を引っ張り出した。
まだ早朝だけど、すでに太陽はさんさんと輝いている。
電動アシストでさっそうと走り出す。
バス停のわきをかすめると、そこに勤め人らしい数人が立っていた。
みなさん、これから仕事なんですね・・・・
ときどき不思議な気持ちにおそわれる。
わたしの人生って悪ふざけじゃないか。
いままでわたしがまじめに努力や苦労をしたことがあっただろうか。
唾棄すべき生き方だろうけど、それでもこんな調子のまま、終わりは近い。
わたしは自分の人生をだれかに記憶してもらおうとは思わない。
それどころかわたしの死後は、みんなからさっさと忘れられたいと思っているくらいだ。
けっきょくわたしは、わたしを軽蔑する人たちを尻目に、ひとりでさっさとこの世から消えるのだ。
やっぱり人生悪ふざけだなあ。
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