寄り道
雨に降り込められたときはどうやってヒマをつぶすか。
まかせとけ。
先日図書館で借りてきた司馬遼太郎の「街道をゆく」を読む。
もう何度も読んだことのある本だけど、読むのに時間のかかる本だから、ヒマつぶしにはもってこい。
なんでそんなに時間がかかるのか。
このシリーズのうちの『モンゴル紀行』を例にとって説明しよう。
「モンゴル紀行」は、まだソ連時代の1974年ごろに週刊朝日に連載された紀行記だから、書かれた内容はもはや歴史の一部になったといっていい。
硬直した官僚機構のもとのロシアの旅が、どれほどややこしくてメンドくさかったか、それを知りたかったらこの本を読むべし。
堅すぎてイヤという人は、椎名誠の「シベリア追跡」でもいいけど。
わたしもこの本に影響されて、いちじはモンゴルを夢みたことがある。
イルクーツク、ウランバートル、ゴビなどという、童話に出てくるような地名がどれほどわたしの胸をときめかせたことか。
もっともその後のわたしは、中国とシルクロードに傾注して、モンゴルふうの景色はそっちでまかなってしまった。
「モンゴル紀行」を読んでいると、いろいろ気になることが出てくる。
たとえば主要舞台であるイルクーツクやウランバートルってどんな街なのか。
もちろん本の中にその描写があって、文章からじっさいの景色を想像するのは、わたしは得意なほうだけど、もっと便利な方法がある。
わたしのテレビ番組の録画コレクションの中に、これらの街が出てくるものがあるのだ。
というわけで、読書を中断してコレクションをひっかきまわす。
イルクーツクはシベリア鉄道の途中駅で、わたしの部屋にはシベリア鉄道を記録した映像がふたつある。
ひとつはつい最近再放送された、1999年の記録映像で、もうひとつは2008年の映像だ。
とくに1999年のほうは、わたしが大陸中国を走りまわっていた時期と重なり、列車内をみても、中国の長距離列車とそんなに変わらないから、ついなつかしい気分になってしまった。
ウランバートルは「世界ふれあい街歩き」シリーズの中に出てきた。
これはまだ数年まえの映像で、最近はロシア、中国、そしてモンゴルも発展がいちじるしいから、司馬遼太郎が旅したころとは、街の景色は絶対的に違うだろう。
しかし、ときどき街の背景に、緑におおわれたゆるやかな山並みが映る。
こればっかりは作家が旅をしたころと変わらないに違いない。
そんなふうにやたらに気になることが生じ、そのたびに寄り道をして、調べたり、ひっかきまわしたりするから、この本は読み終わるのに時間がかかるのである。
添付したのは、わたしが中国で撮影したモンゴルふうの景色。
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