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2020年7月 7日 (火)

ロシアの旅

0957a

また図書館で本を借りてきた。
本さえあれば、どんな不遇な幽囚生活でも恐るに足らんのわたしのこと。
今日もひたすら読書三昧さ。
今回は「シベリア鉄道9300キロ」と「シベリア最深紀行」という2冊。

ロシアの旅というのは、若いころのわたしの見果てぬ夢だった。
その悲願が叶いそうだったころ、ちょうど中国のシルクロードとカチ合っちゃって、費用の安そうな中国にしたという残念な思い出がある。
わたしがシベリアを旅することはもうないだろうけど、せめて本を読んで、部屋にひきこもったまま世界旅行をしようというのである。

「9300キロ」の著者は蔵前仁一という人だ。
紀行記が好きで、司馬遼太郎の「モンゴル紀行」から始まって、椎名誠、宮脇俊三、沢木耕太郎、下川裕治、ポール・セローなど、いろんな本を読みあさったはずのわたしだけど、この名前はとんと記憶がない。
彼のこの旅は
2005年のこととある。
これはわたしがいまメールのやりとりをしている中国人の知り合いと、青海湖のほとりをうろうろしていたと同じ年だ。
ロシアではすでにプーチンが登場していて、オリガルヒ(新興財閥)を刑務所に叩っこみ、ロシアも変わりつつあるころである。

読み始めた当初はちょっとまじめすぎる紀行記かなと思ったけど、だんだんぶっちゃけて椎名誠ふうになる。
雨に降り込められたときなど、ヒマつぶしに好適な本だった。
シベリア鉄道について、いろいろ研究したはずのわたしにも、初めてという新知識があちこちに出てきた。
ロシアのホテルでは夜中に娼婦から電話がかかってくるなんてのはべつに新知識ではない。
これは中国も同じだった。

シベリア鉄道が建設中だったころ、冬になると、バイカル湖の氷の上に鉄道をひいたなんてことは初めて知った。
たまに氷が割れて湖底に沈んだ列車もあったそうだ。
バイカル湖は世界一の水深をほこる湖なので、列車はそのままになったという。
ロシア人のおおらかさを象徴するような話ではないか。

この本を読んだかぎりでは、蔵前さんの旅もけっしてグルメやブランド商品買い占めのような俗物旅行ではなく、レベルからすると、ちょうどわたしの旅と似たようなものだったようである。
つまり無駄はしないけど、さりとてケチに徹する旅でもない。
わたしも中国に行ったときは、列車は彼と同じ一等のコンパートメントだった。
それはもちろん、チケットは日本に比べればずっと安いという理由があったけど。

蔵前さんが旅行したころは、まだロシアにはソ連時代の悪しき風潮が残っていたのかどうか、彼はあちこちで写真を撮っていいものか迷っている。
ソ連時代のロシアでは撮影禁止がやたらに多く(そのへんの事情を知りたければ椎名誠の「シベリア追跡」を読めばよい)、ヘタすれば捕まってラーゲリ行き、もしくは強制送還という噂が飛び交っていた。
しかし蔵前さんより8年後にロシアを旅したわたしは、いちども警官に職質も、賄賂を要求されたこともないから、彼はほんとうに微妙な時期に旅をしたらしい。

わたしはロシアで駐車禁止を取り締まっているパトカーを発見して、これはめずらしいと、正面から写真を撮ったことがある。
撮られているお巡りさんはおもしろくない顔をしていたから、蔵前さんの時代なら、わたしはいまごろラーゲリで刑期を務めあげているころだったかも。
添付したのがそのパトカー。

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