バニー・レークは行方不明
いっぺんに秋めいてきた夜はなにをするか。
昨夜は録画した映画を観ていた。
「バニー・レークは行方不明」という、かなり古い(1965)モノクロのミステリー映画だ。
最近のせせこましい映画に閉口している当方としては、コーヒーをわきに置いて、ミステリー映画をじっくりと鑑賞するのは、なかなか優雅な楽しみといえる。
この映画のあらすじを説明すると、英国に引っ越ししてきたばかりの、アメリカ人の若い母親の4歳の娘が行方不明になる。
母親は従兄弟の青年とともに、必死になって娘を探しまわる・・・・この先はネタバレだけど、いまどきわざわざ観ようという人がいるかしらという古い地味な映画だし、わたしはそのうち老衰で死んでしまうのだから、無責任にバラしてしまうのだ。
バラされたくない人は、このあと話がすこし脱線するから、そのあいだにこのブログを閉じたらいい。
例によって映画を観ながら、ああでもないこうでもないと雑念にふける。
「2001年宇宙の旅」でボーマン船長を演じたキア・デュリアが重要な役で出ていたけど、おそらくこの映画あたりがキューブリック監督の目にとまって、抜擢されたんだろうと思う。
ちなみに「バニー・レーク」は英国映画であり、勘違いしている人もいるかもしれないけど、「2001年」も大半は英国のスタジオで撮影されている。
だから監督が役者を知る機会はいくらでもあったわけで、デュリアには申し訳ないけど、ボーマン船長はそれほど演技や個性が必要という役柄ではないから、うん、こいつで間に合わせておくかと、2001年の準備で大忙しのキューブリックは考えたのかも。
さあ、ネタバレだ。
じつはデュリアの演じた従兄弟の若者は、ふだんはまともだけど、倒錯した意識をもつ異常性格者で、彼が娘を隠匿していたというのがオチ。
宇宙船の船長は健全な科学者だったけど、「バニー」のほうは病的な青年の役なのだ。
この映画を観て思い出すのは、ヒッチコックの有名な「サイコ」という映画。
「サイコ」のほうは、大人になっても母親の呪縛から逃れられないノーマンという若者が主人公で、彼は母親と息子の二重人格者である。
息子にちょっかいを出す女は許せないと、息子のなかの母親が殺人を犯すのだ。
ややこしいけど「サイコ」は1960年の映画だから、このころは精神医学をテーマにした映画がブームだったのかも。
ノーマン君の場合はマザコンだけど、ほかにもロリコン、ファザコン、同性愛からナルシシズム、サディズム、マゾヒズム、異常に肥満した女が好きだとか、オシッコを飲みたがるとか、馬が好きとか犬がいいとか、最近ならフィギュアや二次元妻に凝ってみたり、倒錯にもいろんなタイプがあるそうである。
でもわたしは精神分析医ではないから、この映画に出てくる幼児性倒錯なんてものがあるかどうかは知らない。
そういうことは抜きにして、ちょっと気になったのは、誘拐された少女が英国製の小さなスポーツカーのトランクの中で、そんなにいつまでおとなしく寝ているだろうかということ。
睡眠薬がさめたらぎゃあぎゃあ暴れて、人に気づかれてしまうんではないか。
ところがよく観ると、保育園にあずけた娘が行方不明になる、警察に届けて捜査が始まる、テレビがニュースにする、母親がいやらしい大家に迫られる、娘の存在を疑う警視と母親がパブで話し合う、母親が人形作りの家を訪問する、警視は米国から到着した客船の乗客を調べる、従兄弟が母親に暴行し、母親は病院に収容され、そこから逃げ出す、自宅にもどって従兄弟の正体を見抜く・・・・そんなふうにやたらにいろんな出来事を詰め込んであるけれど、これって行方不明から事件解決まで、すべて24時間以内の出来事なんだよね。
だったらいちおうつじつまは合う。
いちゃもんに目のないわたしだけど、監督はオットー・プレミンジャーで、こちらもまあまあ巨匠といっていい人だし、サー・ローレンス・オリビエも出ているし、このくらいはフィクションだからということで大目にみておこう。
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