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2020年10月13日 (火)

ホフマンの舟歌

022b

録画したオペラ「ホフマン物語」を観た。
最初にことわっておくけど、わたしはオペラ初心者だから、このオペラをむかしから知っていたと思われちゃ迷惑だ。
わたしが知っていたのは、このオペラに挿入されている「ホフマンの舟歌」という曲のタイトルくらいだった。
教養のあるなしはこういうときにわかるのかもしれない。

オペラそのものは3時間もあるので、とりあえずその有名な歌の部分だけを聴いてみた。
「ホフマンの舟歌」は4幕目の冒頭でうたわれる。
聴くまえは、素朴な、どっちかというと男性的な歌だろうと思っていた。
「船頭小唄」みたいに、孤独な男の生きざまを切々とうたったものかもしれない。

ぜんぜんちがっていた。
これはレズっぽい女性ふたりが、妖しくからみあいながらうたう、じつに官能的な歌だった。

この舞台のヒロインはパトリシア・プティボンさんといって、けっして若い人じゃないけど、お人形さんのオランピアから、うたわない歌手のアントニア、高級娼婦のジュリエッタまで、ひとりで3役をつとめる。
お人形さんでは好奇心いっぱいのローティーンのようであり、娼婦ではベッドの上でウブな若者をやさしくリードする。
この人はじっさいにアルバイトで娼婦の経験があるんじゃないかと思ったくらいの名演技だ。

「舟歌」がすてきな曲だったので、わたしはリピートを繰り返して5回もぶっ続けに聴いてしまった。
それだけではもの足りず、YouTubeで同じ歌を探してみた。
アンナ・ネトレプコとエリーナ・ガランチャがうたっている映像が見つかったけど、それはオペラの舞台ではなく、演奏会のものだったから、女ふたりが並んでうたうだけで、ぜんぜん官能的ではない。
演技が加味されるだけで、魅力が倍増される歌というものも、この世のなかにはあるらしい。
オペラが品行方正なものだと信じている人が、いまでもいたら、認識を改めるべきだと、そんなことをわたしがいっても仕方ないけど。

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