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2020年12月28日 (月)

地中海/シチリアB

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超自然的?な町チェファルーからセローは、列車でメッシーナという街に向かう。
列車の中でセローは、ひとのいいイタリア人音楽家と話し込んだ。
この音楽家はセローがもの書きであることを知ると、ここは1年中いいところだと書いてくださいよと頼む。
はあはあとセローもあいづちを打つけど、どこか不真面目だ。
いいところでしょう、海はきれいだしと音楽家がいうと、そうですねと返事するものの、腹のなかではきたない海だと思う。
「大地中海旅行」はシニカルな調子でつらぬかれているけど、このシチリア編ははじめから終わりまで、それがかなりきつい。
2時間も列車にゆられているんだから、こういう相手でもいないと退屈だ。

メッシーナの街は海峡をはさんで、いちばんせまいところはイタリア本土と4〜5キロしかはなれていない。
5キロとしたって、新宿からせいぜい中野までくらいだ。
とっくに橋かトンネルが出来ているんじゃないかと思ったけど、いまだに列車は、かっての青函連絡船のように船で運んでいるというから、そういうものはないようだ。

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ちなみにこちら側からあちら側はどう見えるかというと、はい、ストリートビュー。

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つぎは鉄道とフェリーをむすぶ駅のあたり。

メッシーナでは1908年に大地震が発生し、その直後の大津波でこの街は壊滅した。
これより10年ちょっとまえの1896年には日本で明治三陸大津波が起きている。
このふたつの災害に地質学的な関連があったというわけじゃないけど、シチリアも日本と同じ地震大国である。
地震で一掃されてしまったおかげで、メッシーナには古い建物がないという。
でも百年以上まえでしょ。
それだけあったら日本ではかなり古い建物ってことになるけど、やはり石造りの街と木造建築では考え方が違うのかねえ。

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これはストリートビューで見つけた、津波の直撃を受けたと思われるあたりのビルだけど、けっこう年期を積んだ汚い建物じゃないの。
街路樹だって百年あったらこのくらいはのびるぞと、なにがなんでも古い建物を見つけようとする意地悪なわたし。

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衛星写真で駅のまわりをながめていたら、駅の東側に古い城跡のようなものを見つけた(黄色い丸で囲ったあたり)。

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これはナンダということで地上に降り立ってみたら(まるで天使だね)、どうやら破壊された建物跡らしかった。
ということは大震災の廃墟なのか。
いやいや、この街は第二次世界大戦で、連合軍の猛烈な空爆を受けたというから、そっちの跡かもしれない。
ところで東日本大震災の日本の廃墟はもうぜんぶ片付けられちゃったか。

メッシーナはマフィアの巣窟だそうだ。
だいたいヤクザってのは港湾都市から勢力を広げることが多いからね。
日本の山口組もスタートは神戸でしたもんねと、これはセローとわたしの架空対談。
おそろしいのはシチリアでは坊さんまでマフィアをやっていて、いや、マフィアが坊さんをしていたというべきかもしれないけど、自分たちが殺した相手の葬儀で『荘厳なミサをとりおこない、敬虔な口調で説教をたれていた』そうである。

そもそもマフィアはどうして生まれたのか。
知らない人にまたわたしの知識をひけらかしてしまう。
中国にもマフィアに似た紅幇、青幇などという組織があったけど、これはもとをたどれば、国家権力が搾取の道具と化した国で生まれた庶民の互助組織だった。
映画「シシリーの黒い霧」では、マフィアの原型のようなものが見られる。
ひとつの村全体がとなり組みたいな共同体で、官憲の手入れがあると、顔見知りをかくまったり逃がしたり、助け合いの精神を発揮するのである。
それがやがては米国にまで根を張る強大な犯罪組織に発展するのだ。
そんなマフィアに対するセローの考えは、ちょっと教条的なところ、つまり警察のマニュアルみたいなところがある。

セローの本で、メッシーナの港にはヨーヨーをしているような格好のマリア像があるという文章が気になった。
ヨーヨー?
見てみたいでしょ。
ストリートビューでようやく見つけたその像は、たしかにヨーヨーをしているようだった。

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わたしのブログは文章だけで説明されている文物を、想像力欠如の人たちのために、いちいち画像で見せてくれるじつに親切なブログなのだ。
それなのになんでアクセスが伸びないのかしら・・・・ 

ヨーヨーの女神以外に見るべきものはないと、つぎにセローはタオルミーナへ向かう。
衛星写真でま上から見たのではわからないけど、ストリートビューで見ると、この町は海岸ぎりぎりまで山がせまった日本の熱海みたいなところだった。

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だいたいタオルミーナ駅そのものが、道路をはさんでもう目のまえが急な斜面なのだ。
セローはホテルを見つけるために町の中心へ向かうけど、これもとんだ急坂で、文字どおり足もとを見てついてきたタクシーを利用するはめになる。
庭がきれいでしょうと運転手はいう。
たしかに足さえ丈夫なら、ランタナ、ブーゲンビリア、マリーゴールドなどの花が咲き乱れ、頭上にはまぶしい陽光がふりそそぐ、とてもすてきな町だった。

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セローが泊まったホテルはわからないけど、この町のホテルはおおむねこんな感じである。

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そんな急斜面の町のまん中に、ギリシャ時代の半円形劇場があるのが不思議。
この劇場はゲーテも美しさをほめているのに、第二次世界大戦のとき爆撃をくらったそうで、いまでも舞台の背後にその痕跡が残っている。
爆弾のムダ遣いじゃないか、連合軍もアホなことをして。

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セローがホテルでメモをとっているあいだに、わたしは海辺にある観光名所のベッラ島へ行ってみた。
ここはどこかで見たような干潮に陸続きになる島で、休憩所があって磯遊びができるくらいだから、日本なら千葉鴨川の仁右衛門島みたいな感じ。
冬に行ってもつまらないところである。

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タオルミーナ最大の見ものはエトナ火山だそうで、これはベッラ島の近くにある岬の突端から見たエトナ火山の遠景。
タオルミーナの町のどこからでも見えそうだけど、あいにく山の斜面に密集した町だから、どうしてもストリートビューでは遠景が見にくい。
それでまたセローの旅からはみだして、エトナ山トレッキングといこう。

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エトナ山の名前は知っていたけど、ブログに書くためにウィキペディアを調べてみた。
標高は3,326メートルというから富士山よりはいくらか低いけど、ヨーロッパ最大の活火山だそうだ。
ギリシャの哲学者エンペデクレスという人が、自分が神であることを証明しようとして、噴火口から飛び込んだことがあるらしい。
これもカルトのご本尊さまとたいして変わらないアホだな。
桜島みたいにしょっちゅう噴火してるから、いちばん最近のといわれると決めにくいけど、2017年の噴火ではBBCの記者が噴石に当たってケガをしたとか。

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それでもあまり危険な山とは思われておらず、富士山のように、あるていどのところまでは車で行ける。
さらに接近しようと思ったら四輪駆動車が必要だ。
そして火口までは、歩け、歩け。
噴火してなければ登山者はけっこう多いようで、ストリートビューにも登山者が写りこむことがある。

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エトナ山からもどってきて、ふたたびセローのおつきあいだけど、タオルミーナから移動するにあたって、ここには卑猥なみやげものがあるというので、手を尽くして探してみたけど見つけることはできなかった。
観光客が世界中にあふれるようになると、国民性を疑われるということで、セローの旅のあとで販売が禁止になったのかもしれない。
“卑猥”といわれると、きっと関心を持つ人がいると思うけど、わたしもそんな趣味があると思われたくないから、ないものはそれ以上追求しない。
あ、ここに載せた写真はそのみやげとは関係ありません。

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コメント

また、旅に出たいものだ。

投稿: タビ | 2020年12月31日 (木) 10時48分

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