薄氷のシベリア
あっという間に過去の人になったトランプさん。
彼の支持者というのは過激なかわり、忘れるのも早い人たちだったようだ。
たしかに、つぎになにをやらかすか予想もできないおもしろい大統領だったけど、おもしろいというのは大統領として有能ということじゃない。
トランプさんは大馬鹿野郎なのだ。
アメリカで金持ちになるには、頭を必要としないのだという好見本だ。
「ボルトン回顧録」を読むと、パリ協定からの離脱は、彼が国民の人気取りのために大口たたいた無数の公約のひとつであり、あらかじめ予定に入れて首脳会談にのぞんだことがわかる。
わたしは最近「薄氷のシベリア」というテレビ番組を観たばかりだ。
これは地球温暖化を扱ったまじめなドキュメンタリーで、川の氷が薄くなって移動もままならないトナカイの群れや、北極の流氷原などの映像は、最近のものらしくきわめて美しい。
しかし美しさのうらに迫っている危機について、知らない人は依然として多い。
ボルトンさんも本のなかで温暖化を軽視する発言をしているけど、おかげで彼は国別対抗の国務の専門家であって、科学者ではないことが明白になってしまった。
上記のテレビ番組によると、最近ロシアでは領土が広がったという。
べつに武力で併合したわけではなく、これまで地表をおおっていた万年雪が溶けて、見たこともない新しい土地が露出してきたからだとか。
つまり、なんだな、噴火で生まれた西之島による日本領土みたいなもんか。
またシベリアのあちこちで地面が不気味に盛り上がっていて、これは永久凍土のなかに閉じ込められていたメタンや二酸化炭素が、暖かくなってゆるんで地表を押し上げているのだそうだ。
そういうガスが大気中に放出されると、温暖化はさらに加速するから、もうわたしたちはあともどりできない危険区域に足を踏み入れているのかしれない。
このブログではまえに、小さくなった流氷にしがみついているホッキョクグマの画像を載せたことがあるけど、あれが危機を視覚化したCGだったらしいのに比べ、ここに載せた流氷の上の2頭のセイウチは本物だ。
番組のなかに、海の氷が少なくなって海獣類が獲れなくなったため、エサを求めてシベリアの内陸160キロの町までさまよってきたホッキョクグマが出てきた。
大勢の町民が見守るなか、彼はゴミ捨て場をあさったあげく、雪原の上にがっくりアゴを落として動かなくなる。
このあと彼がどうなったのか、だれかエサを与えようという人間がいなかったのかと思うけど、カメラはそこで切り替わってしまう。
トランプさんは地球温暖化にまったく関心のない大統領だった。
環境少女のグレタちゃんとのやりとりをみても、彼の場合まったく科学的根拠のない無関心だったことがわかる。
社会的地位は高いのに科学についてまるで無知という人がたまにいるけど、そういう人がこの地球上に生息していたってかまわない。
ただし、米国の大統領という地位にはいるべきじゃない。
温暖化の結論はまだ出ていないというなら、大統領たるものは悪いほうに備えておくべきじゃないか。
さもなければ、可哀想なホッキョクグマの運命はわたしたちの子供、いや、わたしには子供がいないから、あなたの子供の運命だと思ったほうがいい。
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